知覚過敏の原因とセルフケア
[2025年01月21日]
歯を磨いているとき、冷たい飲み物を飲んだとき、歯が一瞬ズキッとすることはありませんか。
それは、知覚過敏かもしれません。
瞬間的に生じる、鋭い痛みの知覚過敏は、一体何が原因なのでしょうか。
ここでは、知覚過敏について、説明していきます。
また、自分でできる予防法についても、お話していきましょう。
目次
- 1. 歯の構造
- 2. 知覚過敏のメカニズム
- 3. 知覚過敏の原因
- 3-1. 強い力でのブラッシング
- 3-2. 歯周病による歯肉の位置の低下(歯肉退縮)
- 3-3. 歯ぎしり・くいしばり癖
- 3-4. 歯が欠けたり割れたりしている
- 3-5. 酸蝕症(さんしょくしょう)
- 3-6. ホワイトニング
- 4. 自分で出来る知覚過敏の予防法
- 4-1. ブラッシングの仕方を見直す
- 4-2. 歯磨き粉の見直し
- 5. まとめ
1. 歯の構造
まずは、基本的な歯の仕組みを見ていきましょう。歯は、象牙質と呼ばれる部分を中心に構成されており、その中央部分に神経や血管を含む歯髄が入っています。そして、象牙質を守るように、歯冠部はエナメル質で、歯根部はセメント質で覆われています。エナメル質は非常に硬く、咬む力や外からの刺激から象牙質や神経を守ってくれています。歯根部分のセメント質は、強度的に強くはありませんが、歯を周囲の歯槽骨と繋ぎ止める役割をしており、歯肉によって覆われています。
2. 知覚過敏のメカニズム
いつもはエナメル質や歯肉によって守られている象牙質ですが、様々な理由により、象牙質が外界にさらされてしまうことがあります。象牙質の表面には、歯の神経に繋がる象牙細管(ぞうげさいかん)という無数の管の入口があります。そして、象牙質に外から刺激が与えられると、この象牙細管を伝わって歯の神経に刺激が伝わり、それによって歯に痛みを感じてしまうこととなるのです。外からの刺激がなくなれば、歯の痛みも消失します。
3. 知覚過敏の原因
知覚過敏は、神経に刺激を伝える象牙細管の入口が露出してしまい、そこに刺激が加わることにより生じます。では、どのような原因で象牙細管の入口が露出してしまうのか、みていきましょう。
◆3-1. 強い力でのブラッシング
「歯磨きは、軽い力で磨きましょう」と、よく言われますね。これは、強い力でガシガシ磨くと、硬いエナメル質であっても少しずつ削れてしまい、象牙質が露出してしまうからなのです。特に、歯と歯肉の境目は、エナメル質の厚みが薄いので、象牙質が露出しやすくなります。
また、歯肉の部分を強く磨くことによって歯肉が傷つき、縮んで下がってしまいます。歯肉が下がると、歯肉によって覆われていた歯根が露出してきます。歯根部分の象牙質表面はセメント質が覆っているのですが、エナメル質ほど硬くないため、歯ブラシとの摩擦で容易に削られてしまいます。
つまり、歯磨きの際、強い力でガシガシ磨くと、エナメル質や歯肉、セメント質が削れてしまいます。それにより、象牙質の表面にある象牙細管が露出してしまい、外からの刺激が伝わりやすくなり、軽い刺激でも痛みを感じてしまうのです。
◆3-2. 歯周病による歯肉の位置の低下(歯肉退縮)
歯周病が進行すると、歯を支えている骨が溶かされ、その分だけ歯肉が下がっていきます。そのため、歯根がお口の中に露出しやすくなります。先述の通り、セメント質はさほど強くないため、歯ブラシなどで削れてしまいやすく、象牙質が露出しやすくなります。そのため、知覚過敏が生じやすくなるのです。
◆3-3. 歯ぎしりやくいしばり癖
歯ぎしりやくいしばり癖があると、上下の歯が接する面のエナメル質がすり減っていきやすくなります。
また、歯全体に強い力が加わることによって、エナメル質が薄い歯冠の根元部分に慢性的に衝撃が伝わり、エナメル質が欠けて(剥がれて)しまうこともあります。
このようにして、象牙質が露出しやすくなっていくのです。
◆3-4. 歯が欠けたり割れたりしている
虫歯でなくても、歯に強い力が加わると、歯が欠けたり、割れたりすることがあります。
すると、象牙質が表面に露出する、もしくは歯に入った亀裂などのすき間を伝わって、刺激が象牙質に伝わりやすくなり、知覚過敏が生じることがあります。
◆3-5. 酸蝕症(さんしょくしょう)
とても硬いエナメル質も、酸性の環境下に長時間おかれると、表面から溶けていきます。
歯が溶け始めるのはpH5.5以下。
日常生活でも注意が必要です。スポーツドリンクや炭酸飲料、お酢ドリンクなどの酸性の飲み物を長時間ダラダラ飲んでいると、歯が溶けてしまい、知覚過敏のリスクが上昇します。
また、これらの飲料は糖分も含んでいるため、虫歯のリスクも同時に高くなりますので、充分な注意が必要です。
◆3-6. ホワイトニング
ホワイトニングの際に使用する薬剤には、ある程度の刺激があります。
そのため、ホワイトニング中およびホワイトニング後に、ジンジンとした歯の痛みや、知覚過敏を感じる場合があります。
ホームホワイトニングは毎日行うことが多いのですが、知覚過敏が強く出る場合は、歯科医師とも相談して、2〜3日、間をあけてみるなどの対処が必要な場合もあります。
ホワイトニングによる知覚過敏は、ホワイトニングをお休みすると、ほどなく消失していきます。
4. 自分で出来る知覚過敏の予防法
では、知覚過敏を自分で予防するにはどうしたらよいのでしょうか。みていきましょう。
◆4-1. ブラッシングの仕方を見直す
「しっかりと汚れを落とそう!」と思って、思わず力を入れて磨いてしまう方も多いのではないでしょうか。
「早く歯磨きを終わらせたいからガシガシ磨いてしまう」という方もいらっしゃいますね。
しかし、歯の汚れは、強い力で磨いても落とすことはできません。むしろ、ブラシの毛先が開いてしまい、うまく汚れを落とすことができなくなってしまうのです。
また、強い力で歯を磨くことによって、エナメル質や歯肉を傷つけてしまうことにつながります。
歯ブラシは、毛先を歯面に当てて、軽い力で小刻みに動かすようにしましょう。
それでも落ちない汚れは、歯石という硬い状態に変化してしまっているといえます。歯石は歯ブラシでは除去出来ないので、歯科医院のクリーニングで除去していくようにしましょう。
適正なブラッシング圧をかけるようにすることで、歯が削れてしまったり、歯肉が下がってしまったりすることを防ぎ、知覚過敏を予防していくことが出来るのです。
◆4-2. 歯磨き粉の見直し
歯磨き粉に含まれる研磨剤は、歯が削れてしまう原因となります。
海外製の歯磨き粉や、「歯を白くする効果あり」といった歯磨き粉には、研磨剤が多く含まれている可能性がありますので、知覚過敏がある時には控えたほうが良いでしょう。
また、知覚過敏用の歯磨き粉には、刺激を伝わりにくくする作用などが含まれています。すでに知覚過敏を感じている方は、知覚過敏用の歯磨きを試してみるのも良いでしょう。
ここでは自分でできる対策を紹介しましたが、歯科医師・歯科衛生士にもお気軽にご相談ください。
知覚過敏の原因は人それぞれです。
知覚過敏の原因が何なのかを診査・診断した上で、あなたに合った予防法をお伝えさせていただきます。必要があれば、知覚過敏の治療を行っていくこともできます。
5. まとめ
- 知覚過敏は、象牙質が様々な理由により外界にさらされ、刺激を感じやすくなることにより生じる。
- 知覚過敏の原因は、強すぎるブラッシング、歯周病による歯肉の位置の低下、歯ぎしり・くいしばり、歯の破折、酸蝕症、ホワイトニングなどが考えられる。
- ブラッシングの仕方を見直す、歯磨き粉を変えるなど、自分で予防していくことが出来る。
- 知覚過敏を感じ、ブラッシングなど気を付けてみても改善されない場合は、歯科医師に相談するとよい。
知覚過敏は、軽度なものから重度なものまでさまざまです。その原因も色々とあり、中には知覚過敏だと思っていたが、実は虫歯が隠れていた・・・といったことも、少なくありません。
「ちょっと歯がしみただけだから大丈夫」と思わず、お気軽に当院にご相談ください。