むし歯のなりやすさは3歳で決まる?最新の考え方を解説します

[2025年01月14日]

かつては「3歳までにむし歯のなりやすさが一生決まる」と言われていました。
むし歯菌の感染時期や乳幼児期の生活習慣が、その後の歯の健康に大きな影響を与えると考えられているためです。

しかし、近年の研究では、この考え方が必ずしも正確ではないことが明らかになってきています。むし歯リスクは3歳以降も変化し続け、適切なケアを続けることで、誰でもむし歯になりにくい口腔環境を保つことができるのです。

この記事では、昔と今のむし歯予防の考え方の違いを解説し、最新のむし歯予防のポイントをご紹介します。

目次

◯昔、3歳までに一生のむし歯のなりやすさが決まると言われていた理由

 ◆むし歯菌(ミュータンス菌)の感染が重要と考えられていた

 ◆食生活と習慣の形成期

 ◆乳歯の健康が永久歯に影響を与えるとされた

◯3歳までにむし歯のなりやすさは決まるのか近年の研究での見直し

 ◆菌叢(きんそう:マイクロバイオーム)は変化する

 ◆むし歯リスクは生活習慣が大きく左右する

 ◆遺伝や個人差も影響

◯むし歯になりにくくするにはどうしたらいい?

 ◆適切な食生活習慣をつける

 ◆歯磨きとフッ素の活用

 ◆歯科検診の習慣化

◯今と昔のむし歯予防の考え方の違いについて

◯まとめ

昔、3歳までに一生のむし歯のなりやすさが決まると言われていた理由

かつて「3歳までに一生のむし歯のなりやすさが決まる」と言われていた背景には、以下のような考え方が影響しています。

むし歯菌(ミュータンス菌)の感染が重要と考えられていた

乳幼児期にむし歯菌が口の中に住みつくかどうかがその後のむし歯リスクに大きく影響するとされていました。特に「母親などの保育者から唾液を介して感染する」という説が広く信じられていました。

乳歯が生え始める生後6ヶ月〜3歳頃にむし歯菌が定着すると、その口の中の環境が続き、永久歯にもその影響が及ぶ可能性が高いとされていました。

そのため、3歳までの口の中の環境がむし歯菌の好きな環境であるかどうかがその後のリスクを左右すると考えられていました。

食生活と習慣の形成期

3歳までに食生活や生活習慣の基盤が形成されるため、この時期の影響が長期にわたって続くと考えられていました。

乳幼児期に糖分の多い食事や飲み物を頻繁に摂取すると、むし歯菌が増殖しやすい環境が作られ、これが習慣になると後のむし歯リスクにつながるとされていました。

さらに、3歳頃までに歯磨きの習慣が身につかないと、むし歯予防が難しくなると考えられていました。

乳歯の健康が永久歯に影響を与えるとされた

乳歯のむし歯が永久歯の成長や健康に悪影響を及ぼすとされていました。

乳歯のむし歯が多いと、永久歯の萌出後もむし歯菌が優勢になりやすいとされており、 むし歯が進行して乳歯が失われると、咀嚼や顎の発達に影響を与え、永久歯が正しい位置に生えることが難しくなると考えられていました。

3歳までにむし歯のなりやすさは決まるのか近年の研究での見直し

これまでの考え方は一部では正しいものの「むし歯のなりやすさは3歳までに決まるのではなく3歳以降も変化し続ける」ことがわかっています。特に以下の点が重要です。

菌叢(きんそう:マイクロバイオーム)は変化する

生まれたばかりの赤ちゃんの口にはむし歯菌は存在しませんが、乳歯が生え始める6ヶ月頃には唾液や食べ物を介してむし歯菌が定着し始める可能性があります。

母親が赤ちゃんに授乳をするだけでも赤ちゃんの口の中から細菌が見つかることもあり、菌に感染させないことは不可能です。

また、むし歯の原因菌はミュータンス菌だけではないことがわかってきました。特定の菌が定着しないように予防するのは難しく、あまり効果的な方法ではありません。菌の感染自体を防ぐよりも、むし歯菌が増殖しやすい環境を作らないことが重要です。

口の中に住む菌の種類は幼児期だけでなく、一生を通じて食生活や生活習慣の影響を受けて変わり続けます。3歳までが肝心とは言えません。

むし歯リスクは生活習慣が大きく左右する

今まではむし歯予防のためにむし歯菌が感染しないように食器の共有やスキンシップを避けるようにしていましたが、むし歯菌を定着することを防いでもむし歯予防にはさほど効果がないことがわかりますた。

むし歯にならないような生活習慣を続けることがむし歯予防には大切と言われています。

糖分の摂取頻度や歯磨き習慣、フッ素の使用、歯科検診の有無などがむし歯リスクを左右します。

遺伝や個人差も影響

唾液の性質や歯の構造、体質などの遺伝的要素もむし歯リスクに影響を与えるため、一概に「3歳まで」で決まるとは言えません。

むし歯になりにくくするにはどうしたらいい?

乳幼児期の生活習慣やお口のケアでむし歯になりにくくなるということは広く知られています。しかし、乳幼児期を過ぎても日常的なお口のケアや適切な食習慣がむし歯予防の鍵となります。以下に具体的な予防方法を解説します。

適切な食生活習慣をつける

甘いお菓子やジュースなど糖分の多い食品を頻繁に摂ると、むし歯菌の活動が活発になります。

  • 食事やおやつの時間を決め、ダラダラ食べを避ける。
  • 甘い飲み物の摂取を控え、水やお茶を基本とする。
  • 規則正しい食事時間を守り、間食の回数を減らす。

歯磨きとフッ素の活用

むし歯を予防するにはフッ素(フッ化物)を使うことが効果的です。

  • 乳歯が生え始めたら歯磨きをスタートし、仕上げ磨きをしてあげる。
  • 適切な濃度のフッ素入り歯磨き粉を使い、定期的に歯科医院でフッ素塗布を受ける。

歯科検診の習慣化

子どもの頃から歯科医院で定期検診を受け、むし歯の予防指導や早期発見に努めましょう。

今と昔のむし歯予防の考え方の違いについて

最後に、今と昔のむし歯予防の考え方の違いをまとめました。

昔の考え方 現在の考え方
3歳までにむし歯のなりやすさが決まる むし歯リスクは一生を通じて変化する。
3歳までにむし歯菌(ミュータンス菌)に感染すると、一生のむし歯のなりやすさが高まる むし歯菌が口の中にいるかどうかは重要だが、むし歯のなりやすさはそれ以降の生活習慣やケアの影響も大きい。
親子で食器を共有しない、キスを避けるなど、感染予防を重視 むし歯菌の存在よりも、食生活や歯磨き習慣がむし歯予防に重要。
乳歯のむし歯はそのまま永久歯の健康に影響すると考えられていた 乳歯のむし歯があっても早期に介入すれば、永久歯への影響は軽くできる。
甘いものを避けることでむし歯を予防できる 糖分の摂取頻度や歯磨き習慣などさまざまな因子がむし歯リスクに影響を与える。
むし歯菌に一度でも感染したら予防は難しい フッ素や定期検診でむし歯予防は可能。

まとめ

昔「3歳までにむし歯のなりやすさが決まる」と言われた背景には、むし歯予防はむし歯菌の感染防止や早期の生活習慣の確立が重視されていたためです。現在では、むし歯リスクは3歳までで決まるものではなく、むし歯リスクは一生を通じて変化し続けることが明らかになっています。

そしてむし歯のなりやすさは食生活や歯磨き習慣、歯科医師による定期的なケアなどの積み重ねでコントロールできることがわかっています。

過去の知識を活かしつつ、最新の予防方法を取り入れることで、むし歯のリスクを最小限に抑えることが可能です。

親子で楽しく歯磨きを習慣づけ、歯科医院での相談を活用しながら、むし歯になりにくい環境を作りましょう!



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