しっかりとした顎をつくるために
[2024年08月26日]
しっかりとした顎をつくるために
「子供の歯並び、どうなるのか不安」
「親の歯並びが悪いから、仕方ないか・・・」
お子さんの歯並びを、小さい頃から不安に感じていらっしゃる方は多いでしょう。
乳歯の時の歯並びが、そのまま永久歯の歯並びになるわけではありません。
しかし、乳歯の段階で、歯の大きさに対して顎が小さいと不安になりますね。
両親の歯並びが、お子さんに遺伝する可能性は100%ではありませんが、0%とも言い切れません。
「何か対策はないのか・・・。」
乳歯の時や、永久歯に生え変わっていく時期に、将来の歯並びのために出来ることがあります。
それは、しっかりとした顎を作っていくということです。
顎は、歯が並ぶ土台となります。
また、歯並びだけではなく様々な機能の面からも、顎の成長は非常に重要な部分です。
今回は、しっかりとした顎を作るために必要なことをみていきましょう。
目次
1. 顎の成長が悪いと、どうなる? ~顎の成長が必要な理由~
「顎が成長しなければ、小顔になれる??」
それは、違います。
小顔=顎の発育が悪い、というわけではありません。
むしろ、顎が成長しないと様々なデメリットが生じてきます。
ここでは、顎の成長が悪い場合のデメリットについて、みていきましょう。
◆1-1. 歯並びが悪くなる
歯は、顎の歯槽骨という部分に生えてきます。
顎の成長が悪いと歯槽骨の成長も悪くなります。
すると、歯がバランスよく並ぶスペースが足りなくなり、歯がデコボコに生えてくる、咬み合わせが悪くなる、といったリスクが高くなります。
歯並びは、見た目だけの問題ではありません。
歯並びが悪いと、歯磨きの際の磨き残しが多くなり、お口の中を清潔に保つことが難しくなります。
そのため、むし歯や歯周病になりやすいといえます。
また、咬み合わせが悪いと、しっかり咬んで食べることが出来なくなり、それによる栄養摂取面への影響が心配されます。
それ以外にも、発音や身体のバランスに対する影響にも注意が必要です。
◆1-2. 舌のおさまるスペースが狭くなる
お口の中に収まるのは、歯だけではありません。
舌も、歯並びの内側にあります。
しかし、顎の成長が悪いと、歯並びのアーチの中に舌が収まりきらない状況がでてきます。
アーチの中に舌が入りきらない場合、舌で歯を内側から圧迫するような癖がつきやすくなります。
その結果、前歯が前方に傾いてしまうこと(前突)や、上下の歯と歯の間にすき間が出来てしまう状態(開咬)になることがあります。
また、舌が後方に追いやられることもあり、舌の奥の部分で気道を塞いでしまうため、慢性的な酸素不足になることがあります。
すると、頭痛や倦怠感、睡眠障害、集中力の低下など、全身的な体調不良に繋がりやすくなるのです。
◆1-3. 筋肉のバランスが悪くなる
顎が成長しないことによって、口腔周囲、および身体全体の筋肉のバランスが悪くなります。
それによって、顎関節症が生じることや、慢性的な頭痛・肩こりなどの全身症状の悪化にも繋がりかねません。
2. 顎の成長に必要なもの
顎の成長には、骨と筋肉の成長が必要です。
骨と筋肉の成長に必要なものをみてみましょう。
◆2-1. 必要な栄養の摂取
成長には、様々な栄養をバランスよく摂取することが必要です。
ここでは、代表的な栄養素についてみていきましょう。
- カルシウム、ビタミンD
骨の形成には、カルシウムが必要です。
ビタミンDを同時に摂取することで、カルシウムの吸収を促進します。
カルシウムは骨を作るだけではなく、筋肉の働きを助けたり、神経を安定させたりする作用もあります。
ビタミンDは、筋肉の修復を促進させる働きもあります。 - タンパク質、炭水化物、ビタミンB
タンパク質は、筋肉の材料となります。
炭水化物は、筋肉を動かす主なエネルギー源になります。
ビタミンBも、エネルギー変換の際に重要な働きをしています。
◆2-2. 適度な運動
身体を動かすことで、成長ホルモンの分泌が促されます。
また、骨に適度な刺激を与えることにより、骨の成長が促進されます。
その他にも、運動をすることにより、食欲が高まることや、適度に疲れることでよく眠れるといった効果もあります。
◆2-3. 十分な睡眠
睡眠中は、成長ホルモンが分泌されます。
特に成長ホルモンが多く分泌されるのは、22時〜深夜2時と言われています。
逆に、明け方は浅い睡眠となりやすいので、あまり質の良い睡眠とは言えませんね。
睡眠の長さではなく、早めの時間に就寝するということも、質の高い睡眠を取るには大切なのです。
3. 顎の成長をアシストするには?
顎の成長を促すために、出来ることはなんでしょうか。
日頃から気をつけていくべきことについて、みていきましょう。
◆3-1. よく咬んで食べる
「子どもの頃から、硬いものを食べなさい」
これは、間違いではありませんが、少し違います。
顎の成長のために必要なのは、硬さではなく、咬む回数です。
つまり、言い換えると「咬みごたえのあるものを、よく咬んで食べましょう」ということが重要なのです。
具体的にみていきましょう。
咬みごたえのあるものとは、食物繊維や筋線維が豊富なものや、弾力のある食べ物などです。
野菜はみじん切りにせずに、少し大きめに切ることや、形を不揃いにすることで、咬む回数を増やすことができます。
また、味付けを薄味にすることも効果的です。
よく咬むことで素材の味を引き出して食べる習慣をつけることができます。
◆3-2. 食事は正しい姿勢で
食事の姿勢にも気をつけましょう。
しっかりと咬むためには、背筋を伸ばして、座った状態で足の裏全体が床や踏み台などに着いている必要があります。
また、背もたれによりかからず、両手が机の上にある状態で食事をする習慣をつけましょう。
◆3-3. 舌の正しい位置を確認する
舌には定位置があります。
皆さんの舌は、今、どこにありますか?
正しい舌の位置は、舌の先端が上の前歯裏側の歯肉付近に軽く触れており、舌表面が上顎にくっついている状態です。
舌が上顎を押し上げることで、上顎骨に刺激が伝わり、成長を促します。
舌が歯と接している、上下の歯の間に舌がはさまっている、といった状態は、間違った位置です。
舌の位置が間違っていると、歯列不正や口呼吸を引き起こす可能性については前にお話ししましたね。
また、お口がポカンと開いていては、舌は正しい位置にいられません。
そのような点からも、お口をしっかりと閉じていることが大切になってくるのです。
4. まとめ
顎の成長が悪いと、
- 歯が並ぶスペースが足りず、歯並びが悪くなる
- 舌がおさまるスペースが足りず、歯並びに影響が出たり、慢性的な酸素不足になったりする
- 筋肉のバランスが悪くなり、身体全体のバランスにも影響を及ぼす可能性がある
顎の成長に必要なものは
- カルシウム、タンパク質、炭水化物、ビタミンB,Dなど
- 適度な運動
- 十分な睡眠
顎の成長をアシストするには
- 正しい姿勢で、よく咬んで食べる
- 舌の位置に気をつける
- お口がぽかんと開いていないよう注意する
「良い姿勢で、好き嫌いなく、よく咬んで食べなさい」
「早く寝ないと、大きくなれないわよ」
など、昔から言われてきたことは、医学的に正しいことが多いのだなと、感心したりします。
顎の成長は、上顎は小学校低学年から中学年、下顎は思春期あたりまでです。
小さい頃から、顎の成長も視野に入れておくことができると良いですね。
お口の中で、不安なことなどありましたら、何でもご相談ください。