授乳期の赤ちゃんの虫歯の原因と予防法

[2023年10月23日]

お菓子のように糖質が含まれた甘くて美味しい食べ物が虫歯の原因になることは多くの方がご存じだと思います。

ところが、お菓子を食べたことのない授乳中のお子さんが虫歯になることがあります。

授乳中に虫歯になるというと不思議に思う方もおられるかもしれません。

今回は、授乳期間中の虫歯の原因と防ぎ方についてご紹介します。

目次

◯母乳で虫歯は起こる?

 ◆虫歯の原因

 ◆母乳の糖質

 ◆母乳の抗菌成分

 ◆母乳は虫歯菌の原因になるのか

◯授乳期間中の虫歯の原因

 ◆母乳の乳糖

 ◆寝る前の母乳

 ◆ジュース

◯授乳中の虫歯の防ぎ方

 ◆お水やお茶にする

 ◆食器を別にする

 ◆保護者の方の歯のクリーニング

 ◆授乳の方法の工夫

 ◆歯磨き

 ◆歯科健診

◯まとめ

 

◯母乳で虫歯は起こる?

授乳期間、お子さんが最も長く口に含むのが母乳です。

母乳は虫歯の原因になるのでしょうか。

◆虫歯の原因

虫歯は、食べ物や飲み物に含まれる糖質をエサにする虫歯菌が作り出した乳酸という酸によって歯が溶かされることで起こる病気です。

糖質は甘さの成分として知られていますね。

糖質の代表とも言えるのが、ショ糖です。

私たちがショ糖を好むように、虫歯菌もショ糖が大好きです。

ショ糖を食べた虫歯菌は、たくさんの乳酸を作り出します。

また、虫歯菌はショ糖を食べたときに、デキストランという接着剤のようなネバネバ成分も作り、歯の表面に強くこびりつきます。

これがプラークの正体です。

食べたり飲んだりするたびに、デキストランで歯にこびりついた虫歯菌から乳酸が供給され続けるので、歯の表面が溶かされて虫歯になるというわけです。

 

◆母乳の糖質

母乳はお子さんの栄養源なので、数多くの栄養素が含まれており、糖質もそのひとつです。

母乳に含まれる糖質は、乳糖というタイプの糖質です。

虫歯菌も乳糖を食べますが、虫歯菌が乳糖を食べても、ショ糖のときのようにデキストランは作られません。

しかも、虫歯菌は乳糖からも乳酸を作り出しますが、ショ糖ほど作り出せるわけでもありません。

 

◆母乳の抗菌成分

母乳には、ラクトフェリンというタンパク質が含まれています。

ラクトフェリンは、抗菌作用、抗ウイルス作用、免疫調整作用などの細菌やウイルスに対する抗菌作用をもっています。

ユニークなことに、ラクトフェリンは有害な菌の活動を抑える一方、有益な細菌には増殖作用を示します。

ラクトフェリンは、虫歯菌に対しても抗菌作用を示し、虫歯菌の活動を抑えてくれます。

 

◆母乳は虫歯菌の原因になるのか

母乳に含まれる糖質である乳糖からは、虫歯菌はショ糖ほど乳酸を作れませんし、デキストランも作り出せません。

しかも、ラクトフェリンの働きで、虫歯菌自体の活動性も抑えられます。

母乳が虫歯の原因になる可能性はとても低いと言えますね。

 

授乳期間中の虫歯の原因

母乳は虫歯になりにくいのに、母乳を主食としている授乳期間中、どうして虫歯が発生するのでしょうか。

次は、授乳期間中の虫歯の原因について解説します。

◆母乳の乳糖

母乳には先ほどお話しした通り、乳糖が含まれます。

乳糖からも乳酸は作られるので、母乳が虫歯の原因に全くならないというわけではありません。

”なりにくい”というだけです。

ショ糖ほどではありませんが、母乳からも虫歯が起こる可能性はゼロではないのでご注意ください。

◆寝る前の母乳

お子さんだけでなく、私たちは寝ている間は唾液が減ります。

唾液には、乳酸を中和したり、汚れを洗い流したり、虫歯菌に溶かされた歯を治したりと、さまざまな働きがあります。

唾液が減るということは、これらの働きも減るということです。

寝る前に食べたり飲んだりすると虫歯になりやすくなるという話を聞いたことありませんか。

これは唾液が減るからなんですね。

お子さんも同じで、寝る前に母乳を飲むとそれだけ虫歯になりやすくなります。

◆ジュース

私たちが甘いものが好きなのと同じく、お子さんも甘いものは好きです。

ジュースを与えると喜びます。

喜ぶからと言ってジュースをあげ続けると、ジュースに含まれるショ糖から乳酸が作り出され、虫歯になってしまいます。

お子さんに与える飲み物も虫歯の原因になるんですね。

◯授乳中の虫歯の防ぎ方

授乳中の虫歯を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

 

◆お水やお茶にする

お子さんに何か飲ませるときは、お水やお茶を選んでください。

ジュースにするとショ糖がたくさん含まれており、虫歯のリスクが高まる上、甘いものを好むとお水やお茶を飲んでくれなくなるかもしれないからです。

スポーツドリンクもショ糖が多いので注意しましょう。

 

◆食器を別にする

生まれた直後のお子さんのお口の中には虫歯菌はいません。

他の人のお口にいる虫歯菌が、お子さんのお口に入ることで虫歯菌がお口の中に棲みつくようになります。

お子さんのお口に虫歯菌が入るルートのひとつが、食器です。

スプーンやお箸を介してお口に入っていきます。

保護者の方が使ったスプーンやお箸で、お子さんに食べさせないようにしましょう。

食べ物の口移しも、虫歯菌がお子さんのお口に入る原因になるので、しないようにしてくださいね。

 

保護者の方の歯のクリーニング

意外と見落とされやすいのが、保護者の方の歯です。

保護者の方のお口に虫歯菌がたくさんいれば、お子さんのお口に虫歯菌がうつりやすくなります。

そこで、保護者の方自身が、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けていただき、お口の中の虫歯菌の数を減らすようにしましょう。

 

授乳の方法の工夫

母乳は虫歯になりにくいですが、絶対にならないわけではありません。

そこで、おっぱいを欲しがる時間や回数を減らすように工夫しましょう。

例えば、遊びを増やしたり、寝付くと早めにお口から外すなどです。

◆歯磨き

乳歯は前歯から生えてきます。

前歯が生えてきたら、歯を磨くようにしてください。

これには歯磨きに慣れてもらう意味もあります。

最初は、嫌がりますが、徐々に慣れて歯磨きをさせてくれるようになってきます。

特に、前歯の裏側は虫歯になりやすいので、注意して磨いてください。

◆歯科健診◆

お子さんが1歳半と3歳になるタイミングで、歯科健診が行われています。

このときだけでなく、少なくとも半年に一回くらいは歯科医院でお子さんの歯の健診を受けることをおすすめします。

虫歯があれば早期発見できますし、フッ素塗布も同時に受ければ、虫歯予防にもつながるからです。

 

◯まとめ

今回は、授乳中の虫歯についてお話ししました。

母乳は虫歯になりにくいのですが、決してならないわけではありません。

また、母乳以外の飲み物としてジュースを飲ませていたりすれば、こちらは十分虫歯の原因になります。

お菓子を食べていないからといって、虫歯にならないわけではないのです。

当院は、小さなお子さんの虫歯の専門知識や治療、予防の経験の豊富な歯科医院です。

お子さんの虫歯が心配な方はもちろん、虫歯にさせたくない方も、ぜひ当院にお越しください。

 



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