一度しか生えかわらない歯と何度も生えかわる歯
[2023年06月22日]
こんにちは
わたしたち人間の歯は、子どもの歯とよばれる乳歯から、大人の歯ともよばれる永久歯へ一度だけ生え変わります。
なぜ、乳歯から永久歯へ生えかわるのかは、未だよくわかっていません。
子どもの顎や口のサイズと大人のそれでは大きさが異なるため、小さな子どもの顎や口に合ったサイズにするためという見解もありますが、仮設の段階です。
ところが動物の中には、私たちの歯と違って一生のうちに何回も歯が生えかわる種もあります。
今回は、一度しか生えかわらない歯と何度も生えかわる歯についてお話しします。
二生歯性と多生歯性、一生歯性
私たちの歯のように、一生涯の間に乳歯から永久歯へと1回だけ生えかわる歯を二生歯性といいます。
対して、死ぬまでの間に何回も生えかわる歯を多生歯性といいます。
ネズミのように一度も生えかわらない歯は一生歯性とよばれます。
ネズミの前歯は、ずっとのび続けるのが特徴です。
このような歯を常生歯といいます。
種の進化と歯
二生歯性は、わたしたちのような哺乳類に見られる歯です。
一方、多生歯性は爬虫類以下に見られる歯です。
ご存知の通り、哺乳類の方が爬虫類より進化が進んでいます。
したがって、何度も生えかわる方が進化が進んでいるように思われるかもしれませんが、二生歯性の方が進化の段階は上になります。
多生歯性の特徴
わたしたちにはない多生歯性の特徴をみていきましょう。
歯の形
多生歯性の歯は、ほとんどが同じ円錐形に近いシンプルな形をしています。
下等な生き物の歯は、基本的にこれです。
わたしたちの歯は、食べ物の形に合わせた複雑な形になっています。
歯の形からも、哺乳類の歯の方が進化が進んでいることがわかります。
歯の生え方
わたしたちの歯は、顎の骨にしっかりと歯根という根っこが埋まった状態になっています。
見えているのは、歯冠という歯の一部だけです。
ところが、多生歯性の歯の場合、わたしたちの歯のような歯根に相当する部分がありません。
このため、顎の骨の表面にくっついているような状態になっています。
動物ごとの多生歯性の歯
魚類から爬虫類までの多生歯性の歯についてご紹介します。
魚類の歯
お頭つきのお魚料理を食べると歯がついているので、魚類の歯を見たことがある方も多いと思います。
魚の歯は、魚の種類によって歯の形や数に大きな違いがあります。
プランクトンを主食とするような魚の場合、噛む必要がほとんどないので、小さな歯しかありません。
小魚を食べる魚の場合は、比較的しっかりとした歯がたくさん並んでいます。
ユニークなのは、鯉の歯です。
鯉の口をのぞいてみても、顎には歯がありません。
鯉の歯はなんと、喉にあるのです。
これを咽頭歯(いんとうし)といいます。
また、魚類の歯といえば、サメを忘れてはいけません。
サメの歯は、映画の『ジョーズ』や、USJの『ジョーズ』で有名ですね。
サメの歯は、みな鋭く尖った円錐形をしています。
大きさもバラバラですし、わたしたちのようにきれいに並んでいるわけでもありません。
抜けると新しい歯に代わるので、鋭く尖った歯が不規則に何列にも並んでいます。
サメの大きな口と相まって、サメの歯には恐怖感を感じざるを得ませんね。
余談ですが、『ジョーズ』はアルファベットにすると『JAWS』です。
JAWは顎という意味の言葉で、これの複数形ということから、上顎と下顎を指す言葉です。
両生類の歯
魚類の次に生まれたのが両生類です。
両生類の歯も、魚類と同じく多生歯性で、比較的形の似た歯が並んでいます。
両生類もたくさんの種がいますが、比較的身近なのはカエルではないでしょうか。
カエルの歯にはユニークな特徴があります。
なんと、上顎にだけ歯があり、下顎には歯がないんです。
どうして下顎に歯がないのかはよくわかっていません。
爬虫類
両生類の次に進化したのが爬虫類です。
爬虫類の歯は、爬虫類をペットで飼っている方でなくても、恐竜の化石などでご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。
爬虫類の歯は、同じ形の歯が並んでいます。
これが顎の骨にくっついた状態になっていますので、古い歯が新しい歯に代わるときには、歯がくっついているところで顎の骨が骨折して歯が取れるようになっています。
生えかわるたびに骨折するのは、痛くないのでしょうかね。
なお、同じ爬虫類でも、カメには歯がありません。
まとめ
今回は、一度しか生えかわらない歯と何度も生えかわる歯についてお話ししました。
わたしたちの歯のように一回しか生えかわらない歯を二生歯性、何度も生えかわる歯を多生歯性といいます。
何度も生えかわることができる方が、虫歯や歯周病になっても安心なので、一見すると良さそうに思われるかもしれません。
多生歯性の歯は、二生歯性の歯のようにしっかりとした歯根がありません。
食べ物の種類に合わせた形もしていないので、効率的に食べることもできません。
何度も生えかわる歯は、それだけシンプルな構造になっているわけです。
まるで、しっかりした葉っぱを持つ常緑樹と薄っぺらい葉っぱの落葉樹の葉っぱの違いのようです。
ですから、多生歯性の歯よりも、わたしたちのような二生歯性の歯の方が、生物にとっては良い歯なのです。