大きなメリットが得られる子どもの頃からの開咬治療
[2023年02月14日]
こんにちは
歯列不正にはさまざまなタイプがありますが、そのひとつに前歯の噛み合わせがおかしい開咬という歯列不正があります。
開咬は大人だけでなく、子どもにも認められる歯列不正です。
開咬のお子さんは、ずっと開咬の歯並びで生活しているので、開咬がご自身にとって普通になっていますから不自由を感じることはありません。
子どもさんなので、歯並びを気にする方もあまり見られません。
開咬の治療は大人になってからでもできますが、子どもの頃から取り組むと大人になってからの治療では得られないメリットが得られます。
今回は、子どもの頃から開咬治療を受ける利点などについてお話しします。
開咬について
開咬とは、上下の歯を噛み合わせたときに、何本かの歯が連続して噛み合わせられない歯列不正です。
奥歯で噛み合わせたときに、上顎と下顎の前歯が触れ合わない前歯部の開咬が、よく知られています。
反対に、前歯が噛み合わせられるが奥歯が噛み合わせられないというタイプもあります。
開咬の問題点
開咬という歯列不正は、見た目以上にさまざまな悪影響を及ぼしています。
噛めない
開咬の一番の問題点は、前歯で食べ物を噛み切ることができなくなるという点です。
ヒトの歯は、前歯で食べ物を噛み切り、奥歯で食べ物をすり潰して、食べ物を小さくします。
食べ物を小さくすることによって、飲み込みやすくすると同時に、胃や腸で消化しやすくします。
開咬の歯並びでは、上顎と下顎の前歯が触れ合わないので、前歯の持っている食べ物を噛み切るという役割が果たせなくなります。
発音が不明瞭
開咬は発音や飲み込みにも悪影響を及ぼします。
声を出すときに、開咬の歯並びの方は、声を出すときに舌先を前方に過剰に伸ばします。
このため、舌を持ち上げなければ作り出せない音が上手に出なくなります。
飲み込みにくくなる
開咬の方は、舌先を過度に前に伸ばす癖がある一方、舌の奥の方の筋力はあまり発達できていません。
飲み込むときは、舌の奥の部分もしっかりと動かす必要があるのですが、開咬の方はそれが難しく、唇や頬の筋力などを代用して飲み込みます。
唇や頬の筋力がしっかりしているうちはいいのですが、高齢になり筋力が落ちるようになると、飲み込みが難しくなり、誤嚥する原因になることもあります。
顎の骨格の異常の原因となる
子どもの開咬では、舌や唇、頬などの筋肉からの悪影響により、骨格にも影響が出ます。
具体的には、上顎骨の成長方向が上方に向かってしまったり、下顎の成長方向が下方に向かってしまったりすることが多いです。
このため、上顎骨や下顎骨の形や大きさの歪みに発展してしまう可能性が高まります。
子どもの開咬の原因
子どもの開咬の原因はいったいなんなのでしょうか?
不良習癖
子どもさんが開咬になる原因のほとんどは、不良習癖です。
不良習癖とは、歯並びを悪くしてしまう癖の総称です。
不良習癖もいろいろありますが、開咬の原因として多いのが、舌突出癖と指しゃぶりです。
舌突出癖とは、舌を前に出す癖のことで、舌先が上顎と下顎の間に挟まることで、上顎と下顎の前歯が触れ合わなくなります。
また、指しゃぶりを続けていると、指が上顎の前歯を外側に押し出し、下顎の前歯を内側に押してしまうので、開咬になります。
噛む力の弱さ
開咬には噛み合わせの力も関係しています。
奥歯でしっかりと食べ物を噛んでいないと、奥歯がのびてきます。
奥歯がのびても、前歯はのびないので、上顎と下顎の前歯が触れ合わなくなるというわけです。
子どもの開咬の治療法
子どもの開咬の治療法は、歯を移動させて治すのではなく、筋肉を使って治す口腔筋機能療法がよく行われます。
口腔筋機能療法とは、なかなか聞きなれない治療法だと思いますが、簡単にいうと歯並びを悪くするさまざまな癖を解消するトレーニングです。
英語では、MFT(ミオファンクショナルトレーニング)ということからも、トレーニングということがお分かりいただけると思います。
舌や唇、頬などお口に関係する筋肉をトレーニングすることで、開咬をはじめとする歯列不正の予防や改善を図ります。
子どもの頃から開咬を治療する利点
子どものときからの開咬治療には大人にはない利点があります。
癖の解消が早い
子どもと大人では癖の解消能力に違いがあり、子どもの方が早く取り除けます。
大人の開咬にも不良習癖は強く関係しており、矯正治療で開咬が解消されても癖が残ったままですと再び歯並びが悪くなってしまいます。
子どもは癖を取り除く能力が高いので、子どもの頃から開咬の治療に取り組むと、不良習癖も早期に解消でき、後戻りを起こしにくくなります。
顎の骨格の変形を予防できる
開咬は大きく分けると、骨格に原因のある骨格性の開咬と、歯だけに原因のある歯槽性の開咬の2種類に分けられます。
子どもの開咬は歯槽性の開咬がほとんどですが、大人の開咬は骨格性の開咬が増えてきます。
歯槽性の開咬なら、歯並びの改善だけですみますが、骨格性の開咬は顎矯正手術が必要となることも珍しくないです。
先にお話しした通り、子どもの頃は歯槽性の開咬だったとしても、その状態が長期化することで骨格性の開咬に発展することもあります。
子どもの頃から開咬を治療しておけば、顎の骨格の異常も予防できるという利点が得られます。
成長発育を利用できる
矯正歯科にとって子どもの最大の特徴は、成長発育しているということです。
子どもの歯並びも、顎の骨格も成長発育によって、日々変化しています。
現在は、顎の骨格の成長の仕方が明らかになっているので、子どもの頃なら顎の骨格を理想的な形や大きさに整えることも可能です。
子どもの開咬症例でも、骨格の改善を図った方がいいケースもないわけではありません。
そのようなとき、子どもなら成長発育を利用することで、顎の骨格も歯並びとともに整えることができるようになります。
これは、大人の開咬治療では得られない大きなメリットです。
まとめ
今回は、子どもの開咬についてお話ししました。
子どもの開咬は、乳歯から永久歯に生え変わりが進む年代の子どもの6~8%ほどに認められます。
1割弱ということですから、比較的頻度の高い歯列不正であるといえるでしょう。
子どもの開咬は歯に原因のある歯槽性がほとんど、対して大人の開咬は骨格に原因がある骨格性が多くを占めています。
骨格性の開咬の治療では、顎矯正手術という骨切り手術が必要となることもあります。
子どもの頃は歯槽性の開咬であったとしても、成長とともに骨格自体も変化し、大人になる頃には骨格性の開咬になっているということも珍しくありません。
したがって、開咬の治療は子どもの頃から始めるのが良いとされています。
当院は、開咬治療をはじめとして矯正歯科の専門知識や治療経験の豊富な歯科医院です。
もし、お子さんの前歯が噛み合わせられないようなら、開咬の可能性が考えられますので、当院で一度ご相談ください。