歯並びにも影響する「咀嚼力」

[2022年08月07日]

食事の際、食べ物をあまり噛まずにすぐに飲み込んでしまったり、あるいは飲み物で流し込んでしまったりしているお子さまはいらっしゃいませんか?

 

歯で食べ物を細かくなるまで噛み砕き、すりつぶして飲み込みやすい食塊にすることを「咀嚼」といいますが、「咀嚼力」というのは文字通り、咀嚼する力、噛み砕く力をいいます。

 

近年、パンやパスタ、ハンバーガーなど柔らかいものを食べる機会が増え、噛む回数も減り、顎を動かすことが少なくなっている傾向にあります。

 

そしてこういった食生活の変化によって、子どもの咀嚼力が低下してきていると言われています。

 

咀嚼力は、子どもの顎の成長には非常に重要な要素の一つであり、この咀嚼力の低下は子どもの歯並びの悪化にも影響します。

 

今回は、この咀嚼力と子どもの歯並びが具体的にどのように関連づいているのか、綺麗な歯並びへ導くために必要なことは何か、詳しくお話していこうと思います。

 

「咀嚼力」と歯並びの関係

綺麗な歯並びというのは、舌や口周りの筋肉、顎の大きさのバランスが良好な上に成り立っています。

 

そして、このお口周りの筋肉や顎の成長を促す上で欠かせないのが「咀嚼力」です。

 

咀嚼力が強く、硬いものでもしっかり噛むことができ、また噛む回数も多く、歯や顎に力がしっかり伝わると、歯や顎の骨は丈夫に成長、発達していきます。

 

さらに顎を良く動かすことで、お口周りの筋肉が沢山使われ、口元も引き締まっていきます。

 

顎がしっかり成長していくと、永久歯が生えてきた時にもスペースが十分に確保された状態になるため、綺麗な歯並びを得ることができるのです。

 

一方、咀嚼力が弱い場合はどうでしょうか。

 

咀嚼力が強い場合とは逆に、噛む回数も少ないので、顎の骨にかかる力が小さくなり、顎の骨が十分に発達、成長してくれません。

 

このように、咀嚼力が弱いと顎の成長が進まないため、結果的に歯が並ぶスペースが不足し、歯並びがガタガタになってしまう可能性があります。

 

このように、咀嚼力は顎の成長と密接に関係しており、歯並びにも大きな影響があることが分かっていただけると思います。

 

「咀嚼力」をUPさせるには?

では、この咀嚼力をアップさせるにはどうしたらいいのでしょうか。

 

咀嚼力を鍛えるには、「歯をしっかり使うこと」「顎をしっかり動かすこと」が重要ですが、その基本となるのが「食事」です。

 

今回は、歯科医院でもよくお伝えする、今すぐに実践できる内容をピックアップしてみます。

 

食べ物の大きさ・硬さを工夫する

冒頭でお話したように、近年ではパンやパスタなど、あまり噛まなくても食べられる柔らかい食べ物が食卓に多く並ぶようになりました。

 

こういった柔らかい食べ物のデメリットとしては、奥歯の「すりつぶす」、前歯の「噛みちぎる」といった機能がほぼ使われないことです。

 

特に奥歯のすりつぶす機能がないと、顎をしっかり動かすことも減ってしまいます。

 

こういった背景の中で、少しでも子どもたちの咀嚼力を高めるためにおすすめしたいのが、食べ物の「大きさ・硬さ」を工夫することです。

 

子どもの食事となると、どうしても子どもの口の大きさを考慮し、食材を最初から小さく刻んだものなどが多くなりがちです。

 

それを今日から少し変化させ、野菜やお肉などの食材を、前歯で噛みちぎってからでないとお口に入らないくらいの一口大の大きさにカットする、という工夫をしてみましょう。

 

さらに、少し固さを残した状態に調理するなどすると、より噛み応えが得られ、顎をしっかり動かすことができます。

 

食べる姿勢をチェック

お子さまの食事をするときの姿勢について気にされたことはあるでしょうか。

 

背もたれにもたれかかっていたり、猫背になっていたり、足がぶらぶらと床から浮いていたりすることはないでしょうか。

 

今は、テーブルに椅子というスタイルで食事をするご家庭も多いと思いますが、その際、足が床から浮いていると、体に踏ん張る力が入りにくくなり、顎の噛む力も弱くなってしまいます。

 

台を用意し、両足をしっかり着けることが大切です。

 

また、テーブルの高さはお子さまの腕の動きを窮屈にさせる高さになっていないか、椅子は背筋がしっかりのばせるようにお尻が安定しているか、のチェックも重要です。

 

姿勢が安定すると、食事に集中できるとともに、しっかり噛むことができ、咀嚼回数も上がります。

 

食事中の周りの環境

テレビをつけて食事をとるご家庭も多いと思いますが、ここでも注意が必要です。

 

テレビを見ようと顔が常に同じ方向に横向きになって食事をしている場合、左右いずれかでのみ咀嚼する、片側噛みになる傾向があると言われています。

 

こうなると顔の筋肉の左右のバランスが崩れ、歯並びや咬み合わせにも影響します。

 

食事の際の座る位置やテレビの位置などを変えてみるなどの対応が必要です。

正しい咀嚼が出来ていることが大切

ここまで、歯並びと咀嚼力の関係や、その咀嚼力を上げるにはどうしたらいいか、についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。

 

お子さまに当てはまるポイントはあったでしょうか。

 

ここで上げたものはごく一部で、お子さまそれぞれに必要な対応等がまだあるかもしれません。

 

近年、歯科医院ではこういった食事の取り方、内容に関する情報提供の他、より積極的にお口周りの筋肉や咀嚼力を鍛えるためのトレーニングを取り入れているところが増えています。

 

正しい咀嚼が出来ていることが、咀嚼力の向上、さらに綺麗な歯並びにも繋がっていきます。

 

もし今、お子さまの食事の仕方やお口の動かし方等で気になることがあれば、一度歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。

 



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