歯科医師が教える!矯正治療中の食事の工夫
[2022年02月21日]
こんにちはMM鹿クリニック院長の山脇です。
歯と全身の健康、見た目の改善に現在多くの方が歯科矯正治療を行っています。
しかしマウスピース矯正を除いて、ほとんどの矯正器具は歯につけっぱなしになります。矯正治療中は痛みや違和感から食べ物が食べにくいと感じることがあります。
毎日の食事は全身の栄養摂取のためだけでなく、楽しい時間を過ごすために重要です。
そこで本日は、矯正治療中の痛みの原因や矯正治療中の食事について詳しく解説していきます。
◎矯正治療中の痛みの原因について
矯正治療中は以下のような原因によってお口の中に痛みを感じることがあります。まずは痛みの原因について理解し、どのような食事がよいか考えていきましょう。
◯矯正器具を装着したことにより粘膜が擦れる痛み
矯正器具は、金属やプラスチックでできており、歯の表面に接着剤で装着されています。
矯正器具を装着することによって、今までなかった異物が敏感な口の中に常にある状態になります。
口は食事の時だけでなく、おしゃべりしたり呼吸したりするときにも無意識に動かしている組織です。
口の中の薄い粘膜が矯正器具と擦れることによって、擦り傷のような痛みが発生することがあります。特に、矯正器具を装着してから始めの1週間は口内炎ができやすい状態になります。
舌側矯正と呼ばれる、歯の内側にワイヤーを通す矯正治療では、常に矯正器具に舌が当たるため、舌に口内炎ができやすくなります。
◯矯正力によって歯が動くことによる痛み
矯正治療では、ワイヤーなどの力を使って歯を一定の方向に移動させる力をかけていきます。歯は一方向に持続して力が加わると、押されている側の骨が吸収し、反対側に新しく骨が作られることによって、一方向に動いていきます。
この歯が吸収される時に痛みを感じる物質が出ることによって痛みを感じます。歯には歯根とあごの骨の間に歯根膜(しこんまく)というじん帯のような組織があります。
例えば、歯を後ろに動かすとします。ワイヤーで歯に後ろ向きの力をかけると、歯の後ろ側の歯根膜が圧迫されます。歯根膜が圧迫されると痛みを感じる物質が出て歯と骨の間にすき間を作ろうとします。
この働きによって、歯の後ろ側に骨が吸収してできたスペースが作られ歯が移動していきます。
歯の前側には移動した分だけ新しい骨が作られます。矯正治療のワイヤーを交換して2〜3日がピークですが、1週間後までは強い力がかかるので、矯正力による痛みを感じやすい状態になります。
◯食べ物を噛むことによっておきる痛み
矯正治療中は固いものを食べると矯正器具にも噛む力が加わり、噛んだ時の痛みを生じることがあります。
繊維質の魚や野菜は歯と矯正器具の間に挟まりやすく、食べ物を噛んだ時の痛みにつながります。
矯正器具を付けていると歯磨きが十分に行えず、虫歯ができていることがあります。食べ物を噛んだ時の痛みは虫歯が原因の可能性がありますので、痛みが続くようなら歯科医師の先生に相談してみるとよいでしょう。
◎矯正治療中のおすすめの食事
◯強い力で噛まなくても飲み込める食事
歯が動くことによって生じる痛みは柔らかい食事を摂るとよいでしょう。
ごはんだったら水分を多くしておかゆやリゾットにすると食べやすくなります。
野菜は生野菜でなく、煮込んで柔らかくするとよいです。生野菜やフルーツはジュースやスムージーにすると栄養価が高くて熱で壊れやすいビタミンなども摂取できます。
他に、卵料理やグラタンなどもオススメです。普通の食事が難しいときはゼリーやプリンなどにすると、より刺激が少なくなります。蒸しパンやアイスクリームなどもよいですが、虫歯のリスクが高まるので注意しましょう。
◯水分を多く含んでいるもの
お肉やお魚は噛む力が必要で、繊維質なので矯正器具の間に挟まりやすく、痛みを感じやすい食事です。
お肉だったら、柔らかく煮込んだり、ひき肉を使ってハンバーグなどにすると食べやすくなります。お刺身だったら、スジがあるものを避け、たたきにするとよいでしょう。
ちくわやかまぼこなど練り物は噛む力が必要なので、お豆腐やはんぺんなどで代用すると矯正治療中でも楽しめます。
◯矯正装置に挟まりにくいもの
繊維質の野菜やキノコは矯正装置に挟まりやすいので注意が必要です。野菜やキノコは細かく刻むとよいです。鶏肉も繊維が挟まりやすいので、ひき肉にすると食べやすくなります。
◎まとめ
痛みがあると、食欲がなくなりますよね。ネガティブなイメージがあると治療を続けるのが難しくなってしまいます。
ところが、矯正治療による痛みは装置の交換後1週間程度で治まることがほとんどです。
数日間お口をいたわる食事を工夫してみましょう。食事の内容を見直すことで新たなバリエーションが生まれるかもしれません。
どうしても痛みが取れない場合には、我慢せずかかりつけの歯科医師の先生に相談してみてくださいね。