認知症とお口の中の関係(その2)
[2024年06月29日]
認知症予防のために、お口の中で出来ること
前回は、認知症についての概略をお話しました。
しっかりと咬むことが出来る人のほうが認知症になりにくいことや、
歯周病菌がアルツハイマー型認知症を進行させる要因になるという発見もありましたね。
今回は「しっかり咬むこと」が、どのように認知症の予防に関係しているのか。
また、認知症の予防および進行抑制のために、どのようなことに気をつけたら良いかについて、お話していきましょう。
目次
1.しっかり咬むことがもたらす認知症予防への効果とは
1-1. 脳への血流量が増加する
1-2. 筋肉の衰えを予防する
1-3. 食べ物を味わうことができる
1-4. 胃腸の負担を軽減する
1-5. 歯周病やむし歯のリスクが減る
1-6. 感染症・口腔乾燥症の予防
2.認知症予防のために、お口の中でできること
2-1. 今ある自分の歯を長持ちさせる
2-2. しっかりとした咬み合わせを回復させる
2-3. 口腔周囲の筋肉をしっかり使っていく
2-4. 定期健診を受診する
3. まとめ
1.しっかり咬むことがもたらす認知症予防への効果とは
しっかりと咬むことは、認知症の予防に効果的であることを、前回お話していきました。
では、しっかり咬むことで、認知症の予防に対してどのような効果があるのかをみていきましょう。
1-1. 脳への血流量が増加する
しっかりと咬むということは、顎顔面の筋肉をたくさん動かすことに繋がります。
筋肉を動かすことによって、顎顔面の血流量が増加し、その流れは脳への血流量の増加にも直結するのです。
血流量の増加は、脳細胞の活性化に繋がります。
また、咬むという行為は、様々な部位を連動させることによって成り立ちます。
顎だけではなく、舌・頬・口唇・咽頭など、全てを協調させて動かすためには、数えきれないほどの脳からの指令を必要とするので、ここでも脳細胞の活性に繋がるのです。
1-2. 筋肉の衰えを予防する
しっかり咬むことで、顎顔面の筋肉のトレーニングにも繋がります。
筋肉は、使わないことで、どんどん衰えていきます。
それは、咬む筋肉・飲み込む筋肉も例外ではありません。
口腔周囲の筋力の衰えは、むせや誤嚥性肺炎にも繋がるので、十分注意する必要があります。
また、筋肉を使いながら頭を使うことは、血流の増加と脳細胞の活性化を同時に行うこととなるので、認知症予防に効果的です。
お食事の際には、軟らかい食べ物だけでなく、本人にとって無理のない範囲で咬みごたえのある食材なども加えていくこともおすすめします。
1-3. 食べ物を味わうことができる
よく咬むことによって、食物と唾液が混ざり合い、舌で味を感じやすくなります。
味覚も脳への刺激の1つです。
ただ、ぼんやりと食事を摂取するのではなく、食材の様々な味を感じながら、脳への刺激を送りましょう。
咬んだ時の食感も味わっていくことが出来ると、食事の楽しみも広がりますね。
また、旬の食材を取り入れることにより、四季の移り変わりを感じることもできます。
家族やお友達と食卓を囲むことで、コミュニケーションの場にもなりますね。
食事が単なる栄養分の摂取の時間ではなく、楽しみの1つとなるためにも、自分の力で咬むことは必要なのです。
1-4. 胃腸の負担を軽減する
よく咬むことで、食べ物が細かくなり、消化吸収されやすくなります。
唾液の分泌も促進されるので、食べ物が唾液に含まれる消化液と混ざりやすくなり、消化の吸収の助けとなります。
また、様々な栄養分を摂取しやすくすることにより、認知症の原因ともなる生活習慣病の予防になります。
1-5. 歯周病やむし歯のリスクが減る
しっかり咬むことで、唾液が分泌されやすくなります。
唾液はお口の中に溜まった食べかすなどを洗い流す、自浄作用があります。
また、歯の表面の再石灰化を促す効果もあるので、歯周病やむし歯のリスクの軽減に繋がります。
1-6 感染症・口腔乾燥症の予防
お口の周りの筋肉が衰えてくると、お口が常にポカンとあいてしまうことがあります。
お口が常に開いていると、口腔内が乾燥し、唾液が出にくくなり、口腔乾燥症になりやすくなります。
すると、唾液の自浄作用や抗菌作用が働かなくなってしまうのです。
よく咬むことによって、お口の周りの筋肉が鍛えられ、お口が開いたままになりにくくなります。
また、唾液の分泌が促進されることにより、お口の中に入ってきた、感染症の原因となる細菌・ウイルスの排除を行いやすくなります。
2. 認知症予防のために、お口の中でできること
認知症の予防のためには、よく咬むことが大切であることがおわかりいただけたと思います。
また、アルツハイマー型認知症の発症に関わる歯周病を悪化させないことも大切ですね。
では、具体的にどのようなことに気をつけていけば良いのかをみていきましょう。
2-1. 今ある自分の歯を長持ちさせる
歯を失う原因の第一位は、歯周病、第二位はむし歯です。
今ある歯を失うことがないように、むし歯は早めに治療を行いましょう。
歯周病に関しては、毎日のブラッシングが大切です。
それに加えて、歯科医院での定期的なクリーニングも行っていくと良いでしょう。
その際、毎日の歯ブラシでの磨き残しがないか、自分で磨きにくい部位の歯ブラシの当て方なども、確認していくことをおすすめします。
また、歯ぎしりやくいしばりの癖は、歯の寿命を短くします。
気になる方は、相談してみましょう。
2-2. しっかりとした咬み合わせを回復させる
既に歯が失われている、保存不可能な歯がある。
そんな場合は、ブリッジや義歯・インプラントなどの方法で、咬む機能を回復させていくようにしましょう。
それぞれの方法に、利点と欠点があります。
お口の中の状態によって、どの方法が最も適しているか、お気軽にご相談ください。
2-3. 口腔周囲の筋肉をしっかり使っていく
筋肉は、使わなくなるとすぐに衰えていってしまいます。
しっかりと咬んで、口腔周囲の筋肉を使うことが大切です。
また、よく笑う、よく喋るということも、口腔周囲の筋肉を使うので効果的です。
お口を大きく開けたり閉じたりする体操や、本や新聞などを声に出して読む、なども良いでしょう。
また、
「最近、食事中に食べ物をこぼしやすくなった」
「むせやすくなった」
「水分が飲み込みにくい」
このような症状は、口腔周囲機能の衰え(オーラルフレイル)のサインかもしれません。
少しでも気になることがあれば、歯科医師に相談しましょう。
早めに相談することで、早期回復を望むことができます。
2-4. 定期健診を受診する
定期的に、歯科医院にて検診およびクリーニングを行いましょう。
むし歯や歯周病は、早めの処置が大切です。
「毎日のブラッシングで汚れがしっかり落ちているか。」
「お口の周りの筋肉が衰えてきていないか。」
なども定期的に歯科医院でチェックしていくことをおすすめします。
3. まとめ
・ しっかりと咬むことによって、脳への血流量が増加し、脳細胞が活性化する。
筋肉の衰えや感染症、口腔乾燥症を予防する
歯周病やむし歯のリスクが減る
食べ物を味わい食べることができ、食事が楽しみの1つとなる。
・ 認知症の予防のために、出来るだけ自分の歯を長持ちさせ、失った咬合を回復させる。
口腔周囲の筋肉をしっかり使い、衰えないようにする。
定期健診を受診し、お口の中の健康を保つ
ヒトはいずれ老いを迎えます。
それを止めることはできません。
しかし、そのスピードを遅らせるように、努力することはできます。
人生100年時代の今、その長い時間をより充実したものにするために、今から出来ることをしていきましょう。
MM歯科では、皆様の生活の質をより良いものにしていくために、お手伝いをさせていただきます。
お口の中で気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。