認知症とお口の中の関係

[2024年06月25日]

日本における65歳以上の方の、実に7人に1人が認知症であると言われています。
その認知症の予防に、お口の中の健康状態が関係していることをご存じですか。

今日は、認知症とはどのようなものなのか。

また、認知症とお口の中の関わりについて、みていきましょう。

 

 

目次

1.認知症とは
◆1-1.認知症の症状
◆1-2.認知症の種類
2.軽度認知障害とは
3.お口の中が健康なひとは、認知症になりにくい?!
4.最新の研究で判明した、認知症と歯周病の関係
5.まとめ

 

1.認知症とは

認知症とは、様々な原因によって脳の細胞が損傷を受け、脳の機能が低下することで様々な障害が起こり、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。

1-1.認知症の症状

認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状」という2つの種類があります。
具体例をみていきましょう。

中核症状
・ 記憶障害 : 物事を覚えられなくなり、思い出せなくなる。
「物忘れ」していることの自覚がなく、日常生活に支障がある。
(「人の名前が思い出せない」などといった、自覚のある物忘れとは異なる)
・ 理解・判断力の障害 : 考えるスピードが遅くなる。家電やATMなどが使えなくなる
・ 実行機能障害 : 計画や段取りを立てて行動できない
・ 見当識障害 : 時間や場所、人との関係が分からなくなる

行動・心理症状
・ 行方不明など : 歩き回って、帰り道が分からなくなる
・ せん妄 : 落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやく
・ 妄想 : 物を盗まれたなど事実でないことを思い込む
・ 抑うつ : 気分が落ち込み、無気力になる
・ 幻覚 : 見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる
・ 人格変化 : 穏やかだった人が短気になるなどの性格変化
・ 暴力行為 : 自分の気持ちをうまく伝えられないなど、感情をコントロールできないために暴力をふるう
・ 不潔行為 : お風呂に入らない

(参考:厚労省 認知症施策の総合的な推進について)

1-2. 認知症の種類

認知症とは、病名というよりも、脳の機能低下によって日常生活に支障をきたす状態のことを指します。
そして、その原因などにより、いくつかに分けられます。
代表的なものをみていきましょう。

①  アルツハイマー型認知症
認知症のなかでも最も多く、全体の68%を占める。
脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積することによって神経細胞が破壊され、脳細胞が死んでしまうことによる。

②  脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られず、脳細胞が死んでしまうことによる。

③  レビー小体型認知症
脳内にレビー小体というたんぱく質が蓄積することによって、神経細胞が破壊されることによる。

 

2. 軽度認知障害(MCI)とは

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)とは、正常と認知症の中間の状態。
つまり、認知症に近づいてきているが、まだ認知症ではない状態のことをいいます。

物忘れなどの症状はあるけれども、日常生活には支障をきたさない状態です。
医療機関で軽度認知症と診断された方が認知症になるのは、1年で10%程度。

その他の90%の人は、軽度認知症のレベルにおさまる人(レベルを維持する人)や、年相応の正常レベルに回復する人もいます。
つまり、軽度認知症の状態で気が付き、これから認知症に進行していかないようにすることが、とても大切なのです。

 

3.お口の中が健康なひとは、認知症になりにくい?!

2019年の国民生活基礎調査によれば、要介護になる主な原因の第1位は認知症(17.6%)です。
この認知症と歯科との関わりにおいて、わかりやすい統計があります。
それは、咬むことの出来る歯の本数と、認知症発症との相関関係です。
歯を失い、義歯なども使用しておらず、うまく咬むことが出来ない人と、自分の歯が20本以上残っている、もしくは自分の歯がなくても義歯などにより咬むことができる人を比較します。
すると、咬むことが出来ない人のほうが、認知症の発症リスクが約1.9倍にもなるのです。

つまり、自分の歯でも義歯などの人工の歯であっても、しっかり咬むことができる人は、認知症になりにくい、ということが言えるのです。

 

4.最新の研究で判明した認知症と歯周病の関係

最近の研究では、認知症の発症に歯周病菌が関係していることが明らかになりました。

認知症の中で最も多い「アルツハイマー型認知症」は、脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積されることによって発症すると言われています。
近年のマウスを用いた研究から、歯周病菌であるPg菌(Porphyromonas gingivalis)によって、この「アミロイドβ」の生成・蓄積が促進されることが判明したのです。

脳内に「アミロイドβ」が蓄積すると、脳神経細胞が壊されていきます。
結果的に、脳の機能低下をきたし、認知症を発症するというわけです。

脳内での「アミロイドβ」の生成や蓄積のメカニズムは未だに解明されていません。
しかし、歯周病菌が「アルツハイマー型認知症」の進行に関与するということは、明らかになったのです。

 

5.まとめ

・ 認知症とは、様々な原因で脳の機能が低下することにより障害が起こり、日常生活に支障をきたす状態のこと。
・ 認知症には、中核症状とよばれる記憶障害、理解や判断力の障害、実行機能障害、見当識障害がある。
また、中核症状によって、うまく生活ができず、妄想や人格変化など、自己の性格や人間関係などに支障をきたすことによる行動・心理症状がある。
・ 認知症には、その原因によっていくつかの種類に分けられる。
認知症の中で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、次に多いのが「脳血管性認知症」である。
・ 軽度認知障害(MCI)とは、正常と認知症の中間の状態である。
軽度認知症の状態で気が付き、ここから認知症に進行しないようにすることがとても大切。
・ 自分の歯や入れ歯などの人工歯により咬むことが出来る人のほうが、歯を失ったままで咬めない人よりも、認知症になりにくい。
・ 最新の研究により、歯周病菌がアルツハイマーの進行に関与することが判明した。

認知症を予防するには、まず認知症を知ることが大切です。
また、軽度認知症の段階で、認知症に進行していくことを防止することが、とても大切なのです。

次回は認知症を予防・進行抑制していくために、お口の中で出来ることについてお話していきましょう。

お口の中で気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。



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