親知らずは、抜いた方がいいの?
[2022年05月28日]
「親知らずって抜いた方がいいんですか?」
歯科医院に来られる患者様から日頃よく聞かれるのが、「親知らずって抜いた方がいいんですか?」という質問です。
一般的に、親知らずの抜歯にはどうしても術後に痛みや腫れなどが酷いイメージを持たれている方も多く、「出来れば抜きたくない」と考えている方が多いようです。
抜いた方がいいのかどうかという質問が出るのは、おそらくこういったことが理由にあると思われます。
そこで今回は、抜いた方がいい親知らずの特徴、また親知らずを抜かない場合将来的にどういうリスクがあるのか、抜いた時どういった状態になるのか、などについてお話していこうと思います。
こんな親知らずは抜歯した方がいい!
親知らずの周りの歯肉の炎症を何度も繰り返している
親知らずが生える場所は一番奥で、大きく口を開けても目ではっきりと見えづらく、非常に歯ブラシがあたりにくい場所です。
特に上顎の親知らずにおいては頬が邪魔してしまい、歯ブラシが入るスペースがないことが多いです。
そのため、一度歯科医院で清掃して炎症を抑えたとしても、日頃のケアが不十分なため再び歯肉に炎症が起きてしまいます。
炎症が強い場合は、痛みだけでなく開口障害や発熱を伴うこともあり、酷い場合食事が取れなくなってしまいます。
このように、炎症を何度も繰り返すような場合は、親知らずの抜歯を積極的に検討する必要があります。
親知らずの歯が一部分だけ歯肉から出ている
骨に完全に埋まっている親知らずを完全埋伏、一部分だけ埋まっており一部は歯肉から出ている親知らずを半埋伏と言います。
この半埋伏の状態だと、他の歯と同様に口腔内のプラークが歯に付着します。
ブラッシングで落とすことができれば問題ないのですが、上記のように、元々ブラッシングが難しい位置に生えていること、磨き残しによって歯肉の炎症だけでなく、虫歯が進行してしまうリスクがあります。
虫歯のリスクでいうと、親知らずだけではなく手前の歯も虫歯のリスクが高まります。
虫歯の治療となると歯を削る必要がありますが、一部埋まっている歯の部分まで進行してしまっている場合、そこまで削ることができないため、虫歯治療が非常に難しくなります。
このようなことから、痛みが出てしまった場合などもすぐに対応出来ないため、虫歯のリスクが高い、あるいは虫歯ができていても範囲が小さい段階で、前もって抜歯しておく方が良いでしょう。
虫歯については、下記にもまとめてあります。
抜かなくても良い親知らずとは?
上下の親知らずが正しく咬合しており、口腔ケアが可能な場合
上下の親知らずがしっかり咬み合い機能している、かつブラッシングも問題なく出来る場合は、虫歯や歯肉が腫れるリスクも低く、積極的に抜く必要はありません。
下顎の親知らずの根っこが神経に近い場合
下顎の中には、下顎管と呼ばれる下歯槽神経が通っている管が走っています。
親知らずの歯根というのは、この下顎管に非常に近かったり、あるいは、根の先端が曲がっており下顎管を取り巻くような状態になったりしていることがよくあります。
こういった抜歯によって神経を損傷させてしまうリスクが高い場合は、抜歯を控えることがあります。
上顎の顎骨の奥の方に親知らずがある場合
上顎の親知らずは、鼻の横に広がる上顎洞に近い位置に存在することがあります。
この場合、無理に抜歯をすると、上顎洞に炎症を起こしてしまうことがあります。
こういった場合も、抜歯はせず経過をみることがあります。
親知らずって抜くとどうなる?
では、親知らずを抜くとどういう症状が出るのでしょうか。
よく質問される、痛み、腫れについて説明していきます。
「腫れ」のピークは抜歯処置の2.3日後から
親知らずを抜くと頬っぺが腫れるというのをよく聞かれると思います。
この「腫れ」は歯を抜いた後の炎症によるものですが、抜歯直後よりも2.3日後あたりから症状のピークがきます。
歯が一部分だけ骨に埋まっている親知らずの場合、抜歯の処置中に一部骨を削ることもあり、この場合どうしても炎症が強くなります。
ただこの腫れについては、抜歯後およそ7日間ほどかけて徐々に治まっていく経過をたどることがほとんどで、抗炎症作用のあるお薬も併用していきます。
痛みは薬でコントロール
抜歯後は痛みが出ますが、痛み止めでコントロールしていきます。
痛みは完全にゼロにならないこともありますが、コントロールできる範囲の痛みに抑えられることがほとんどです。
親知らずを抜かないとどうなる?
親知らずを抜歯した方がいいケースに当てはまる場合、体調不良や全身疾患の問題など余程の理由がない限りは、やはり早めの抜歯をおすすめします。
虫歯や炎症がある親知らずをそのまま放置したことで、日に日に痛みが強くなって来院される患者様も少なくありません。
こういった場合で非常に困るのは、何か処置をしようとしてもなかなか麻酔が効いてくれないことです。
炎症反応が強い時というのは、基本的に麻酔の効きは悪くなります。
まずは、投薬で炎症を抑えてからの処置となり、痛くて来院されてもすぐに対応できないことがあります。
また、年齢が高くなればなる程、抜歯後の骨や歯肉の回復は遅くなります。
年齢が若いうちに抜歯をする方が傷口の治りも早く、体への負担も軽減されます。
親知らずは早めに対応を!
親知らずの抜歯は、外科処置である抜歯自体が怖い、あるいは、抜歯後の腫れや痛みが一定期間続くのが気がかり、などの理由から敬遠している方が多いと思います。
ただ、これまで説明してきたように、親知らずに関しては生え方や位置関係によっては将来的にトラブルになる可能性もある一方で、どういったトラブルが起きるのか、ある程度予測がつくものでもあります。
まずはかかりつけ医で、ご自身のお口の中の状況を確認してもらい、親知らずに今後どんなリスクがあるのかどうかを診てもらうことをおすすめします。
そして抜歯などの処置が必要な場合は、少しでも早めに対応することが重要です。