歯科医が解説する、指しゃぶり・指吸いの問題点とその治し方

[2024年05月02日]

指しゃぶりをしている子どもを見ると子どもっぽくてかわいらしく見えますが、指しゃぶりは歯やお口の成長に悪影響を及ぼします。

成長するにつれて指しゃぶりを自然にしなくなることが多いのですが、中には指しゃぶりがなかなかやめられないお子さんもいます。

指しゃぶりがやめられなかったら、どのような悪影響が生じるのでしょうか。

今回は、指しゃぶりの悪影響と指しゃぶりがやめられないときの対処法についてご紹介します。

この記事を最後までお読みいただければ、指しゃぶりの対処法までお分かりいただけると思います。

 

目次

◯指しゃぶりについて
 ◆ 指しゃぶりとは
 ◆ 指しゃぶりは本能かも
 ◆ 指しゃぶりを止める目標時期
◯指しゃぶりの悪影響
 ◆ 歯並びへの悪影響
 ◆ 健康への影響
◯指しゃぶりを止める方法
 ◆ ご家庭での対処法
 ◆ 歯科医院での対処法
◯まとめ

 

指しゃぶりについて

まず、指しゃぶりについてお話しします。

指しゃぶりとは

指しゃぶりは、指を吸うクセです。

歯科医学的には吸指癖とよばれ、親指を吸うことが多いです。

歯やお口に関係するクセを口腔習癖といいますが、数ある口腔習癖の中で最も多いとされているのがこの指しゃぶりです。

 

指しゃぶりは本能かも

指しゃぶりは、実は赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから始まっています。

お腹を超音波で調べると、赤ちゃんが指を吸っている映像が見られるときがあります。

生まれたあと、母乳を吸うために、お腹の中にいるときから指を吸って、母乳を吸うトレーニングをしているのかもしれません。

赤ちゃんが指しゃぶりをしているのはお腹の中にいたときからの習慣ともいえ、赤ちゃんが指しゃぶりをしていること自体は問題ありません。

指しゃぶりを止める目標時期

指しゃぶりを止める時期は、明確に定められているわけではありません。

そこで、指しゃぶりのクセのある子供とない子供を比べてみますと、3歳以降の正常な噛み合わせの割合が、クセのある子供はない子供の半分くらいにまで減少しています。

そして、歯列不正の割合は逆に倍くらいになっています。

このことから、3歳ごろになっても指しゃぶりが続いているのなら、歯並びに影響が出やすいので、やめさせるようにした方が良いでしょう。

 

 

指しゃぶりの悪影響

大きくなっても指しゃぶりを続けていると、お口や歯並びにさまざまな問題が生じます。

 

歯並びへの悪影響

指しゃぶりはさまざまな歯列不正の原因になります。

▶︎上顎前突症

上顎前突症は、上顎の前歯が前方に出ていて、下顎の前歯と噛み合わせられない歯並びです。

いわゆる出っ歯です。

指しゃぶりが原因の上顎前突症では、上顎の前歯が外側へ向かうように傾き、下顎の前歯が内側へ倒れ込んでいることが多いです。

 

▶︎開咬

開咬は、上顎の奥歯と下顎の奥歯を噛み合わせたとき、前歯が噛み合わせられない歯並びです。

上顎前突症と同じく、上顎の前歯と下顎の前歯の傾きによって生じることが多いです。

 

▶︎上顎歯列の狭窄化

上顎歯列の狭窄化とは、上顎の左右の奥歯が内側に倒れ込んだ歯並びです。

歯並びが狭窄化すると、U字型を描いている歯並びがV字型のような感じになり、歯並びが全体的に狭くなるため、このようによばれています。

指しゃぶりをすると、奥歯が頬の筋肉の働きで内側に押されます。

この状態が続くと、奥歯が次第に内側に傾き、奥歯の歯並びが狭くなり、狭窄した歯並びになってしまいます。

 

▶︎交叉咬合

交叉咬合は、歯並びの一部分だけが、上顎より下顎が外に出ている歯並びです。

上下の噛み合わせがクロスしているので、交叉咬合とよばれています。

 

健康への影響

指しゃぶりの影響は、歯並びだけにとどまりません。

▶︎口呼吸

口呼吸は、鼻ではなく口を通して呼吸するクセです。

上顎前突や開咬になると唇が閉じにくくなります。

お口が自然と開いたままとなり、口で呼吸するクセが身についてしまいます。

口呼吸を続けると、お口が乾燥するだけでなく、喉のリンパ節にも異常をきたしやすくなり、全身の健康にも悪影響が出ます。

 

指しゃぶりを止める方法

最後に指しゃぶりを止める方法をご説明します。

ご家庭での対処法

まず、ご家庭での対処法から説明します。

▶︎説得療法

説得療法とは、指しゃぶりが悪い理由を保護者の方がご本人に説明し、ご本人自ら指しゃぶりをやめさせる方法です。

指しゃぶりを目にしたら、その都度声かけするのもいいですね。

一番理想的なやめさせ方ですが、ご本人の協力が不可欠なのが難点です。

 

▶︎指しゃぶりを防ぐ装置

ご家庭用の指しゃぶり防止装置はありませんが、代用できるものは多くあります。

例えば、手袋や指サック、指人形です。

指をしゃぶったときの感じが変わるので、指しゃぶりしなくなる子もいます。

また、指にマニキュアを塗ったり、辛いものをつけたりする方法もあります。

 

▶︎寝ているときの指しゃぶり対策

寝ているときに指をしゃぶっているのなら、そっと指を抜いてあげてください。

 

歯科医院での対処法

歯科医院での対処法をご紹介します。

ご家庭での対処で指しゃぶりが解消できない場合は、歯科医院で相談してみてください。

▶︎説得療法

歯科医院でも説得療法は行われます。

歯科医院では、ご本人だけでなく保護者の方にも指しゃぶりの害を説明し、指しゃぶりを止めるようにもっていきます。

この場合もやはり、ご本人の協力が成功を左右します。

 

▶︎習癖防止装置(お口用)

習癖防止装置は、指しゃぶりをできなくする装置の総称です。

取り外しできるようなタイプと歯に接着するタイプに分けられます。

取り外しできるタイプは、人工歯のついていない入れ歯のような感じのもので、歯に金具をかけて取り付けます。

上顎の前歯の裏側に指しゃぶりを防ぐ装置がついています。

歯に接着するタイプは、取り外しできません。

左右の奥歯にリング状の金具を取り付け、両側の金具を歯の裏側にはわせた金属製のワイヤーで繋ぎます。

ワイヤーの上顎の前歯の裏側部分に出っ張りがついていて、指しゃぶりできなくさせます。

いずれも説得療法で効果が乏しい場合に選ばれる方法で、初めから選ばれることはあまりありません。

 

▶︎習癖防止装置(指用)

指しゃぶりをする指先につける指サックのようなタイプの習癖防止装置もあります。

 

まとめ

今回は、指しゃぶりの悪影響と治し方についてお話ししました。

指しゃぶりを続けていると、さまざまな歯列不正を起こしてしまいかねません。

もちろん、指しゃぶりだけが歯列不正の原因ではないので、指しゃぶりをしなければ、歯列不正が起こらないというわけではありません。

ですが、指しゃぶりはお子さんの歯列不正の原因となる口腔習癖のトップに挙げられます。

大きくなっても指しゃぶりを続けているなら、やめるのがおすすめです。

当院は、指しゃぶりをはじめとして、歯列不正につながりかねないさまざまなお口のクセの専門知識や経験の豊富な歯科医院です。

お子さんの指しゃぶりが気になる方は、当院でぜひご相談ください。



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