歯がないクジラ、ヒゲクジラ
[2023年06月08日]
こんにちは
クジラは、わたしたちと同じ哺乳類に分類される動物です。
哺乳類にはみんな歯があるように思われますが、クジラには歯がないタイプがあります。
歯がないクジラはヒゲクジラとよばれる種類のクジラです。
歯がないのに食べ物に不自由しないのでしょうか。
今回は、歯がないクジラ、ヒゲクジラについてご紹介します。
ヒゲクジラについて
現在のクジラは、ヒゲクジラ類とハクジラ類の2種類に分けられます。
クジラはもともとはハクジラしかおらず、今から3400万年ほど前にハクジラから分かれて、ヒゲクジラが誕生したと考えられています。
ヒゲクジラは歯がない
ヒゲクジラは哺乳類なのに、歯がありません。
その代わりに上顎にクジラヒゲとよばれるものがたくさんついています。
これがヒゲクジラの特徴で、名前の由来でもあります。
ただ、ハクジラから分かれた頃は、ヒゲクジラの特徴であるクジラヒゲはなく、歯があったようです。
その後、歯がなくなり、クジラヒゲをもつ今のヒゲクジラのようなクジラになりました。
クジラヒゲについて
クジラヒゲは、”ヒゲ”という名前から、体毛を想像しそうですが、実は毛ではありません。
もちろん歯でもありませんし、歯が毛のような形に変化したものでもありません。
クジラヒゲは、ヒゲクジラの口の粘膜が、板状の形に変化したものです。
わたしたちの爪は皮膚が変化したものなので、それに近いですね。
その形から、ヒゲ板とよぶこともあります。
それが細長く、何本にも何本にもわかれることで、独特な形になりました。
なお、クジラヒゲの枚数や形は、ヒゲクジラの種類によって異なります。
ヒゲクジラから歯がなくなった理由
ヒゲクジラはどうして歯を無くしたのでしょうか。
その理由は食べ物にあると考えられています。
ヒゲクジラ
ヒゲクジラの食べ物は、緯度の高い地域の海に住む動物性のプランクトンです。
プランクトンは、顕微鏡で見ないと見えないくらい小さな生き物です。
魚やイカと違って噛む必要がありません。
飲み込むだけで十分です。
このため、歯がいらなくなり、歯がなくなったと考えられています。
ハクジラの場合
もうひとつのクジラであるハクジラの食べ物は、プランクトンではなく魚やイカです。
わたしたちが魚を食べるときと同じく、しっかり噛まないと食べられません。
このため、ハクジラは今も歯を持っているんですね。
ヒゲクジラの食べ方
ヒゲクジラはどのようにヒゲを使って食べているのでしょうか。
海水に含まれるプランクトンの場合
小さなプランクトンをひとつひとつ口に入れるのでは、巨大なヒゲクジラの栄養はとてもじゃないですがまかなえません。
そこで、ヒゲクジラは、プランクトンがたくさん含まれた海水ごと、そのまま口に一気に入れるようにしています。
日本近海でも見られるザトウクジラは、一度になんと55トンもの海水を口に入れるそうです。
プランクトンは必要であっても海水は必要ないので、ヒゲクジラはクジラヒゲの間に口に含んだ海水を通します。
するとプランクトンだけが濾し取られ、ヒゲクジラはそのプランクトンを食べます。
海底生物の場合
ヒゲクジラの一種であるコククジラは、海底のあたりに住んでいる生物を食べます。
コククジラは、海底の泥や砂を一気に吸い込み、やはりクジラヒゲの間を通してエサだけを濾し取ります。
海水よりも硬い泥水を口に入れるため、クジラヒゲも厚みがあり、太く丈夫な構造になっています。
理由は不明ですが、泥や砂を吸い込むのはなぜか口の右側からだけです。
なお、吐き出すのは両側からです。
エサだけ食べる場合
海水に含まれるプランクトンだけを食べるヒゲクジラもいます。
この場合は、海水を一気に口に入れるのではなく、口を開けたまま泳ぎ、口に入ってきた海水をクジラヒゲを通して、エサだけを濾し取ります。
まとめ
今回は、ヒゲクジラについてお話ししました。
ヒゲクジラには歯がありません。
その理由として考えられるのが、ヒゲクジラの食べ物です。
ヒゲクジラは、プランクトンを食べますが、くじらの大きさに比べてプランクトンはあまりにも小さく、噛めないので丸のみします。
歯が必要なくなり、クジラヒゲが生まれたと考えられます。
歯の役割のひとつは食べ物を噛むことです。
ヒトに限らず、必要のない組織に栄養や酸素を供給するのはもったいないので、使わない組織は徐々に退化していく傾向があります。
ヒゲクジラも、食べるときに噛む必要がないので歯がなくなっていったわけですが、わたしたち人間も調理して食べやすくすることで、親知らずが退化しつつあります。
わたしにはクジラの歯も人間の歯も、同じように減っているように思われるのですが、皆さんはどう感じますか?