小児矯正の将来に果たす役割
[2022年09月07日]
最近では歯科における1.5歳児健診や3歳児健診の受診率の増加だけでなく、定期的に歯科医院を受診されるお子様が増えてきており、以前よりも一層、保護者の方々のお口の中に対する意識が増えてきております。
それに伴い、乳幼児のむし歯にかかる割合は減少傾向を示し、よりきれいなお口の環境になってきておりますが、反対に歯列不正の割合が増加傾向を示し、定期検診時に指摘を受けた方もいらっしゃると思います。
時代とともに、お子様の顎の大きさは小さくなってきており、大人の歯が並ぶスペースが足りず、より重なりやすくなっております。重なった部分は歯ブラシが届きにくく、むし歯になりやすくなってしまうだけでなく、咬み合わせや顎の成長にも影響を及ぼすと言われており、きちんとして歯並びを整えることは大切です。
また、近年、矯正装置の進歩により従来よりも快適にお使いいただける装置も登場してきており、小児矯正のハードルがますます下がりつつあります。今回は小児矯正が将来もたらすであろう様々なメリットをご紹介いたします。
目次
1.顎の成長を促すことが最大のメリット
2.きちんと成長すると・・・
2-1後戻りしにくい
2-2.鼻炎の改善
2-3.無呼吸症候群の予防
3.まとめ
顎の成長を促すことが最大のメリット
小児矯正と成人矯正の最大の違いは顎の成長を利用できるかどうかという点です。成人矯正で歯並びが重なっている場合、並べるスペースを確保するために、歯を抜く、もしくは歯を削らなければなりません。一般的に、顎の成長は主に20歳前後まで大きくなると言われておりますが、実際には6〜10歳をピークに成長の程度は少なくなり、成人になるとほんのわずかな成長しか期待できません。つまり、土台となる顎の大きさを変えられないため、歯に工夫することでスペースを作り、歯並びを整えます。一方、小児矯正では土台となる顎を大きくすることで歯を抜いたり、削ったりせずスペースを確保でき、本来の本数で歯並びを整えられます。一生使う歯をなるべく抜かず、なるべく削らずにお使いいただくために、お子様の時期から矯正を検討されることをおすすめします。前歯が大人の歯に生え変わるくらいの時期を目安に、かかりつけの歯科医院を受診しましょう。
きちんと成長すると・・・
成長を促すと言っても、大きくしすぎてしまうとかえって咬み合わせのバランスを崩してしまうため、適正な大きさまで拡大し、歯並びを整えます。きちんと成長すると、将来的に様々なリスクを減らせます。以下に一部ご紹介いたしますので、ぜひご参照ください。
後戻りしにくい
小児矯正でも成人矯正でも矯正治療に必ずつきまとうデメリットは後戻りです。一般的に、矯正治療では元の位置から力をかけて歯を移動させるため、体の自然な治癒反応として、歯は元の位置に戻ろうとします。そもそも、歯の移動は支えている骨の形を変えながら位置をずらしますが、歯と骨は多量の線維でつながっており、この線維が伸縮することでより移動しやすくなります。つまり、後戻りとはこの線維が元の大きさに戻ろうとするときに歯の位置も同じように戻ってしまう現象のことです。そのため、矯正治療の後、歯の位置を維持するために保定装置を装着する必要があり、特に成人矯正では大事なステップとなります。小児矯正でも、もちろん保定は大切ですが、最初から土台の骨にアプローチし、自然と歯が並ぶスペースを確保することを目指すため、歯の移動をなるべく減らすことで後戻りしにくい環境をつくります。いくら費用や期間をかけて行っても、元に戻ってしまっては意味がありません。せっかく行うのであれば、なるべく長持ちする方法で治療することが望ましいです。
鼻炎の改善
最近、大人に限らず、鼻炎を患っている小児が増えています。鼻炎を患うと、口呼吸になりやすく、上下の顎が狭くなり、歯並びが悪くなります。顎の土台を成長させることで、歯並びのスペース確保だけでなく、特に上顎では、副鼻腔と呼ばれる空洞も併せて拡大できるため、鼻炎の改善につながり、口呼吸を抑制します。鼻炎やそれによる口呼吸の改善は脳の発達にも影響すると言われており、小児矯正で顎の成長を促すことで全身の成長をフォローします。
無呼吸症候群の予防
鼻炎同様に、大人で無呼吸症候群を患っている方が増えてきており、特に抜歯矯正治療を行っている方に多く目立っています。無呼吸症候群では、舌の位置が関連しており、顎が狭く小さいことで舌のスペースが確保できず、睡眠時により後方へ押し下げられることで、気道が狭くなる疾患です。程度によって、脳への影響もあり、最近では注目されている疾患ですが、特に抜歯矯正を行っている場合、歯列全体を後方へ移動させているケースが多く、よりリスクの高い状態です。小児矯正のうちから顎の成長を促し、抜歯をせずに歯並びを整えることで無呼吸症候群の予防につながります。
まとめ
今回は小児矯正における様々なメリットについてご紹介しましたが、治療に100点はなく、必ずデメリットもございます。保険外診療のため治療費が高額であったり、期間を要したりといくつかのデメリットがありますので、かかりつけの歯科医院とよく相談し、必要に応じて矯正治療を行うことをおすすめします。