小児矯正、知っておきたい基本知識
[2022年09月28日]
近年、お口の健康への関心の高まりに併せて、歯並びにも気をつかう方が増え、お子さまの歯並びに関するご質問やご相談を臨床でもよくうけるようになりました。
矯正治療と聞くと、歯をきれいに並べることが目標、と思われている方がほとんどだと思います。
もちろんこれは間違いではないのですが、小児矯正に限っては、目指すゴールや治療の目的がやや異なります。
今回は、そんな中で小児矯正に関して特によく聞かれる質問をピックアップしてみました。
これからお子さまの歯科医院受診を控えている方や小児矯正について関心がある方は、是非参考になさってみて下さい。
小児矯正の「治療内容」について
まず、矯正治療は、Ⅰ期矯正と呼ばれる小児矯正とⅡ期矯正と呼ばれる成人矯正に大きく分けられます。
両者間の治療における一番の違いをお話する上でキーワードとなるのは「顎と骨の成長」です。
Ⅰ期治療である小児矯正では、顎と骨はちょうど成長過程にあり、その成長が健全に進むように誘導していく、正常な歯並びを得るための土台作りの治療がメインです。
一方の成人矯正は、顎と骨の成長はもう終了、ストップしており、その状況下で歯並びの改善を主に目指した治療が行われます。
この違いをベースにして、以下に診療中によく親御様から聞かれる小児矯正治療に関する質問をいくつかご紹介します。
小児矯正をすれば大人の矯正は必要ない?
結論として、小児矯正をしたとしても、継続して大人の矯正が必要になることはあります。
上でお話したように、小児矯正は顎や骨の健全な成長を促し、上下顎の成長のバランスを整えるなどの土台づくりがメインです。
つまり、歯を積極的に並べていく治療ではないので、小児矯正後、完全に歯並びを綺麗にしたい、という場合は、成人矯正が必要になることがあります。
抜歯はしなくてもいい?
小児矯正では、将来的に歯が問題なく顎の大きさにマッチし、ガタつくことなく並ぶスペースを確保することを目標としています。
ですので、小児矯正をすることで、将来的に抜歯せずに歯を並べることが期待できます。
ただ、顎の成長にはやはり個人差があり、小児矯正で成長を促したとしても、そのスペースが確保しきれないこともあります。
その場合は、抜歯が必要になることがあります。
小児矯正の装置の使用について
実際に矯正を始めようと決められたお子さまや親御さまからもよく聞かれるのが「装置がちゃんと使えるかどうかが心配」という声です。
矯正装置には歯に固定するタイプと、取り外しができる着脱タイプがあります。
小児矯正ではこの着脱タイプは多く用いられますが、注意しなければいけないのは、装置を外したままになってしまったり、一定時間装着しなかったりすると矯正の効果が発揮されないということです。
実際、お口に装置が入ると最初は違和感があり、長時間装着することが難しいお子さまもいらっしゃいます。
しかし、短時間の装着から始め、それが習慣化してくると、お口の中に装置がある状態にも徐々に慣れ、長時間の装着も問題なくできるようになることがほとんどです。
加えて、お子さま本人に任せきりではなく、親御様からの声かけなどのサポートも行うことも重要で、矯正治療をスムーズに進める上で心がけていきたいところです。
小児矯正の開始時期、治療期間について
小児矯正を始める時期は、顎や骨の成長を考慮して一般的に6-7歳頃からと言われます。
その中で以下のような質問もよくきかれます。
今すぐじゃなきゃだめ?大人になってからじゃ遅い?
小児矯正の特徴は、冒頭でお話したように、顎や骨の成長を利用して進んでいく治療です。
その成長のタイミングに合わせて、その時期に必要な治療をすることが大切なので、歯科医師の診断によって必要と判断された場合は、なるべくそのタイミングで治療開始する方が良いでしょう。
特に骨格に関わる場合、成長期のタイミングを逃さずに治療する必要があります。
担当の歯科医師としっかり話し合っていくことが重要です。
何歳まで治療するの?
何歳まで治療するのか、という治療期間については、症例によるところが大きいといえます。
基本的には、永久歯が生えそろってからの矯正は成人矯正に含まれるため、小児矯正の治療の範囲とします。
軽度な症例であれば、1-2年で終わり経過観察をしていくこともありますし、骨格的な要因が大きかったり、歯列の乱れが大きく残ったりしている場合は、成人矯正に引き継がれ抜歯が必要になることもあり、年数がかかる場合があります。
小児矯正をはじめる前に大切なこと
ここまで、臨床で小児矯正について比較的よく聞かれる質問を取り上げてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回お話した内容はあくまで一般的な回答であり、お口の中の状況は千差万別、お子さまの場合、成長の速度もそれぞれ異なります。
より詳しく知りたい、と思われる場合は、まずは一度今現在のお子さまのお口がどういう状態か、詳しく歯科医院で診察してもらいましょう。
一方、小児、成人ともに言えることですが、矯正治療は虫歯治療のように短期間で終えられる治療とは異なり、やはり年単位で経過を追っていかなければなりません。
モチベーションを長く維持し、矯正治療の生活に早く馴染めるようにするためには、治療を受ける本人であるお子さまに、矯正治療の必要性について理解してもらうことが何より重要です。
今お子さまの小児矯正を検討されている方は是非この点を意識していただき、お子さまとコミュニケーションをしっかり取っていただければと思います。