子供の歯が足りないかも!これは何故??
[2022年09月21日]
皆さん、こんにちは。
突然ですが、歯って全部で何本あるかご存じですか?
永久歯は上下左右で7本ずつ28本、親知らずを含めると32本が通常の歯の数です。
乳歯は上下左右で5本ずつ、計10本生えています。
しかし、時々一本足りない!乳歯の下から永久歯が生えてこない!
なんてことがあります。
世のお母さん方、お子さんの歯が足りない!と焦った経験はありませんか?
そのような状態を専門用語では「先天性欠如歯(せんてんせいけつじょし)」と呼びます。
今回はそんな「先天性欠如歯」について詳しく解説していきます。
先天性欠如歯とは?
先天性欠如歯とはその名の通り、「生まれつき歯が欠如している状態」の総称です。乳歯と永久歯が共に生えてこない場合や、永久歯のみが生えてこない場合、1本なのか2本なのか、それとも多くの歯がないのか、通常生えてくるべき歯よりも少ない状態を総称して「先天性欠如歯」と呼んでいます。
乳歯が生えてこないケースは稀で、全小児の0.2~2.5%とされていますが、乳歯が欠如した場合には50%以上のケースで後続永久歯(後から生えてくるべき永久歯)の欠如も併せて認められることがあるとされています。
永久歯が欠如するケースは乳歯の欠如と比較すると多く、日本小児歯科学会の小差で約10人に1人で永久歯の先天性欠如が認められると報告されています。更に、ヨーロッパの統計では、近年、この先天性欠如が増加していると報告されています。
乳歯の欠如では乳側切歯(にゅうそくせっし)と呼ばれる、二番目の前歯の欠如が見られることが多く、永久歯では側切歯(そくせっし)や第二小臼歯(だいにしょうきゅうし)、第三大臼歯(だいさんだいきゅうし:親知らず)が欠如することが多いです。
先天性欠如歯の原因は?
先天性欠如歯が生じてしまう原因はなんでしょうか。
我々歯科医師が一番伝えたいことは、お母さんのせいではないですよ!ということです。子供と一緒に相談に来られるお母さんは皆口を揃えて「私のせいでこうなってしまったんでしょうか…」と、言われます。
しかし、先天性欠如歯の原因は明らかになっていないのです。
先天性欠如歯は歯胚と呼ばれる歯の基になる卵のようなものが作られないことで生じます。病期ではなく、形成異常という状態が先天性欠如歯です。
もちろん遺伝の要素もありますが、薬剤の影響や感染、栄養障害、外傷などの様々な要因が重なり合って生じるとされています。
また、若年者で増加傾向にあることから、現代人の咀嚼状態の変化などによる進化、ないしは退化の過程であるとも言われています。
残念ながら、原因が不明のため予防方法も存在しないのが現状なのです。
先天性欠如歯がわかったらどうする?
先天性欠如歯の場合には何が問題となるのでしょうか。
永久歯が欠如した場合、乳歯は生え変わらず大人になっても乳歯が残ったままになります。
乳歯が生え変わるためには永久歯の存在が不可欠なのです。
永久歯がそろそろ生えてきますよ~!というシグナルを出すことによって、乳歯の役割を終えるために歯根の生理的吸収(根が溶け始める)が生じます。
しかし、永久歯が欠如した場合には、乳歯へのシグナルが発生しないために、いつまでも乳歯が残り続ける、という現象が起きるわけです。
全ての歯が永久歯に生え変わっても、乳歯が残り続けていてくれる場合は良いのですが、乳歯は永久歯のように長く使うことを想定していない歯です。
そのため、虫歯になりやすかったり、日々の生活で削れてしまいやすかったり、という欠点があります。
唯一残った乳歯がダメになってしまったらどうなるでしょうか?
見た目にも影響を与えますし、当然噛み合わせにも影響を与えます。
歯並びも悪くなってしまいます。
では、先天性欠如がわかったらどうすれば良いのでしょうか。
まず、乳歯の段階で歯がないとか、乳歯と永久歯の生えかわりが他の子と比べて遅いかも?と気づいた場合には、かかりつけの歯科医院でレントゲンを撮影しましょう。
歯は骨の中に埋まっていますので、口の中を見ただけでは永久歯の有無を判断することは出来ません。
レントゲン撮影後、今後の治療方針をかかりつけの歯科医院の先生と相談するようにしましょう。今後の治療方針によっては矯正治療が必要となる場合もあるため、小児歯科の先生と矯正歯科の先生が協力して治療方針を計画することもあります。
いずれにしても、少しでも気になったらかかりつけの先生に相談することをお勧めします。
永久歯に生え変わってから欠如歯に気づいた場合には、乳歯がしっかり残っているようであれば虫歯にならないように、かかりつけの歯科医院で定期健診を行うことが第一です。
もしも乳歯がすでに抜けてしまった、つかえない状態である場合には、通常の補綴治療(ほてつちりょう:歯が抜けてしまった場合に補う治療法)やインプラント治療、矯正治療を行いますが、噛み合わせの状態や歯がない部位により治療方法が変わるため、かかりつけ歯科医院の先生に相談しましょう。
なお、矯正治療は保険の効かない治療法(自由診療)ですが、多数歯先天性欠如(多くの歯が生まれつき生えてこない)の場合、6本以上の欠如であれば保険適応になることがあります。また、インプラント治療も保険適応となる場合があります。
まとめ
いかがでしたか?
永久歯の先天性欠如は10人に1人と、かなりの割合で生じていることがお判りいただけたとおもいます。それでも、実際に歯がないとなったら焦ってしまいますよね。ただし、治療法は多くありますので、もしかして歯がたりないかも?と思ったらまずはかかりつけの歯科医院でレントゲンを撮影してもらいましょう。
・先天性欠如歯は乳歯は100人に1人程度、永久歯は10人に1人程度の発生率
・乳歯の先天性欠如の場合、後続永久歯の欠如も生じることが多い。
・原因は不明、予防方法はない。
・治療法は歯がない位置や噛み合わせによって様々であり、まずはかかりつけ歯科医院にてレントゲン撮影を。