子供さんの上顎前突症(出っ歯)を改善する咬合斜面板による矯正治療
[2022年04月30日]
お子さんの出っ歯を治す矯正治療
こんにちはMM歯科クリニック院長の山脇です。
乳歯から永久歯に生え変わる混合歯列期という時期に、上顎前突症いわゆる出っ歯の状態になっていると、永久歯に完全に生え変わったのちも、そのままになっていることがほとんどです。
全ての乳歯が永久歯に生え変わる前に上顎前突症を改善すると、永久歯になった後も上顎前突でない歯並びが保たれることが多いです。
混合歯列期の上顎前突症の治療に用いられる矯正装置に咬合斜面板があります。
咬合斜面板とはどのような矯正装置で、どのような効果があるのでしょうか。
今回は、咬合斜面板という子供さん向けの矯正装置を使った矯正治療についてお話しします。
出っ歯の原因や矯正以外の治し方については下記をご参照ください。
■咬合斜面板とは
咬合斜面板とは、取り外しタイプの矯正装置です。
筋肉の働きを利用していることから、機能的矯正装置に分類されます。
ジャンピング・プレートという呼び方をすることもありますが、同じものです。
咬合斜面板の構造
咬合斜面板は、プラスチックの本体部分と歯に引っ掛ける金属製のワイヤーでできています。
このプラスチックの本体部分の上顎前歯の裏側は、少し盛り上がっています。
この盛り上がり部分は、斜面になっていて、斜面板とよばれています。
噛み合わせると、下顎の前歯の先端部分がこの斜面板にあたることから、咬合斜面板という名前がつけられたようです。
咬合斜面板の仕組み
咬合斜面板は、上顎の歯にセットします。
この状態で噛み合わせると、先にお話しした通り、下顎の前歯の先端部分が斜面板に接触します。
すると、そのまま下顎は斜面に沿って、前に向かって滑ります。
このとき、上顎と下顎の奥歯の間には隙間ができており、上下の奥歯は噛み合わなくなっています。
この下顎の前方へ向かう動きと、奥歯が噛み合わなくなっているのが、咬合斜面板のポイントです。
この状態が続くと、下顎が前方に動きます。
そして、上顎と下顎の奥歯は接触しようと延びて、噛み合わせが高くなります。
下顎の前歯は、斜面板にあたることで少し前に倒れつつ、下に押し込まれます。
咬合斜面板はこのような仕組みで作用します。
咬合斜面板の効果が出るまでの時間
咬合斜面板は、寝ている間を中心に1日10時間以上使っていただく必要があります。
早ければ、3ヶ月程度で効果が現れ始めます。
定期的に歯科医院で調整を繰り返しつつ、一般的には6ヶ月~12ヶ月程度使用し続けます。
咬合斜面板の適応症
咬合斜面板で効果が得られるケースについてご説明します。
年齢
咬合斜面板は、混合歯列期から永久歯列期の初期までの子供さんに適応があります。
おおむね6~12歳ごろが目安になります。
上顎前突症
咬合斜面板は全ての上顎前突症に適応があるわけではありません。
上顎前突症と一言で言っても、実はいろいろな原因があります。
咬合斜面板は、その中でも下顎骨が上顎骨よりも後ろに下がっていることで生じた上顎前突症に適応があります。
過蓋咬合
過蓋咬合とは、上顎の前歯で下顎の前歯が隠されてしまうような深い噛み合わせのことです。
やはり、下顎骨が後ろに下がったことで生じた過蓋咬合の治療に、咬合斜面板は適用があります。
咬合斜面板のメリット
咬合斜面板の治療状のメリットについてご説明します。
取り外しができる
咬合斜面板は、取り外しできる矯正装置です。
食事や歯磨きのときは外しているため、日常生活にも影響しにくいです。
成長発育を利用できる
子供さんの下顎骨の成長発育を利用できるので、大人のように矯正治療後の後戻りを起こしにくいです。
虫歯のリスクが低い
咬合斜面板は取り外しできるため、歯に直接接着する固定式矯正装置と比べると、食事の後の歯磨きがとても楽です。
普通に歯を磨くだけで済みますから、子供さんの虫歯のリスクを低く抑えることができます。
咬合斜面板のデメリット
咬合斜面板にはメリットだけでなくデメリットもあります。
成長発育期の子供さん限定
咬合斜面板は、下顎骨の成長発育を利用した矯正装置です。
成長発育時期を過ぎてから使っても効果は得られません。
本人の協力が不可欠
咬合斜面板は歯に接着する矯正装置ではありません。
取り外しができるので、ご本人が嫌がってつけてくれなければ、効果は得られません。
ご本人の協力が欠かせないのも、デメリットのひとつです。
咬合斜面板の使用上の注意点
咬合斜面板での治療を受けるにあたっての注意点についてお話しします。
装着時間を守る
つけていたとしても、つけている時間が短すぎると、やはり効果は出ません。
忘れることなく、毎日、必要な装着時間つけ続けることが大切です。
お手入れ
使った後は、お水できれいに洗ってください。
熱いお湯で洗うと変形してしまうことがあるので、お湯は使わないようにしてください。
ニオイが気になる場合は、マウスピース用もしくは入れ歯用の洗浄剤につけてみてください。
紛失に気をつける
使い終わった後、どこに置いていたか忘れてしまうということが、ままあります。
日中の使わない時間帯は、なくさないように専用のケースに入れて保管するようにしましょう。
まとめ
今回は、咬合斜面板を使った混合歯列期の子供さんの矯正治療についてお話ししました。
咬合斜面板は、
①混合歯列期から永久歯列期の初期
②下顎が後ろに位置したことで生じた上顎前突症や過蓋咬合
の治療に効果のある矯正装置です。
当院でも、子供さんの上顎前突症の治療に咬合斜面板を使っています。
もし、お子さんの歯並びが出っ歯で悩んでいる方で、取り外しタイプの治療法で考えている方は、咬合斜面板の適応があるかもしれません。
ぜひ、経験豊富な当院で一度ご相談ください。