子どもの矯正と体の成長の関係

[2022年11月14日]

近年、お口の健康への関心の高まりから、お子さまの歯並びや口元にも関心をもたれる親御様が増え、診療においても小児矯正についての質問を受けることがよくあります。

 

そこで今回は、小児矯正をお考えの方や、関心がある方に是非知っておいていただきたい、子どもの矯正と体の成長との関係についてお話していこうと思います。

 

子どもの矯正の大きな特徴とは?

まず、子どもの矯正は、成人矯正と矯正治療の目的が異なります。

 

子どもの矯正は、顎の正常な発育を促し、正常な歯並びに導くことを目的としています。

 

そのため、体の成長も考慮しながら治療していくというのが大きな特徴です。

 

これは、発育が終了しており積極的に歯並びの改善をメインで行う成人矯正とは大きく異なるポイン​トといえます。

 

では、具体的に、体の成長と顎の発育や正常な歯並びとはどのような関係があるのでしょうか。

 

体の成長速度は部位によって違う

まず、知っていただきたいポイントとしては、子どもの体の成長において、器官や機能は同じような速度で成長するのではないということです。

 

実は、それぞれ個々に発達し、成長速度やそのピークも異なるのです。

 

子どもの成長の4つのカテゴリー

歯科では子どもの成長過程を表した有名な「スキャモンの成長曲線」というのがあります。

 

子どもの成長過程において、「一般型」「リンパ型」「神経型」「生殖器型」という4つのカテゴリーに分け、それぞれに含まれる体の部位や器官は異なる成長曲線を描きます。

 

①「リンパ型」

免疫系の発育を表し、成長のピークは12歳頃です。

 

②「生殖器型」

精巣、卵巣、性器が含まれ、18-20歳にかけて成長のスパートを迎えます。

 

③「下顎」を含む「一般型」

腕や足などの筋肉、骨格の発育を表し、「下顎骨の成長」もこれに含まれます。

12-14歳頃に成長のスパートを迎えます。

 

④「上顎」を含む「神経型」

脳や視覚器などの発育を表し、「上顎骨の成長」もこれに含まれます。神経系においては、出生時から一気に成長スパートが来て、10歳頃には成長がほぼ100%となります。

 

このように、4つのカテゴリーはそれぞれ成長のピーク時期が異なります。

 

上顎、下顎の成長時期を見逃さない

上記のように、同じ顎骨でも、上顎、下顎はそれぞれ属するカテゴリーが違うことがお分かりいただけたと思います。

 

つまり、「上顎と下顎では成長のスパートのタイミングが異なる」ということです。

 

上顎は10歳頃には成長がほぼ終わり、下顎は12-14歳頃時点で成長ピークが訪れ、その後もまだ成長を続けていきます。

 

子どもの矯正治療の治療計画を立てる上で、この上下顎の成長スパートのタイミングの差は非常に重要なポイントとなります。

 

小児矯正では顎の成長を利用

このように、子どもの上顎、下顎の成長スパートのタイミングをしっかり把握し、それを利用した治療が小児矯正といえます。

 

なかでも特に、よく臨床で遭遇する以下の症例については、顎の成長が非常に関係してきます。

 

「受け口」の場合

上と下の咬み合わせが反対になっている「反対咬合」と言われる状態をいいます。

 

この反対咬合は、できるだけ早い段階で、上顎の成長スパートである10歳以前までに改善する必要があると言われています。

 

というのも、上でお話したように、上顎は10歳頃で成長がほぼ止まりますが、下顎骨は10歳頃以降もまだまだ成長を続けるためです。

 

10歳頃以降も反対咬合をそのまま放置していると、下顎がさらに前方に成長し、改善のハードルが上がっていくことになります。

 

「受け口」の場合、治療するタイミングというのが予後を左右するといっても過言ではありません。

 

「出っ歯」の場合

前歯が前方に出ている状態をいい、起こる原因としてはいくつか考えられます。

 

・前歯だけが前に出ている

・下顎骨の成長が不足している

・上顎骨が大きく成長している

 

これらの原因のどれに当てはまるのかの精査を行い、その上で、

 

・歯並びだけ改善するのか

・上顎骨の成長を抑制するのか

・下顎の成長を促すのか

 

など、その時の子どもの年齢、体の成長過程を評価しながら、顎の成長をコントロールしていく必要があります。

 

体の成長に合わせて「適切な時期に必要な治療」を

ここまで、体の成長と小児矯正との関係についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

子どもの場合は、体、顎の成長を利用しながらの治療がベースになっていることがおわかり頂けたかと思います。

 

成長に合わせて治療を行うことで、顎の大きさや成長度合いのコントロール、改善が可能なため、歯の並ぶスペースも確保しやすくなります。

 

そしてそれによって、顎や体の成長がストップした成人矯正によく見られる抜歯や顎の外科的な治療を選択しなくて済む可能性が高くなるというメリットがあります。

 

もちろん、成人してからでも矯正治療を開始することは可能です。

 

しかし、こういったメリットがあり、将来的な治療の負担を軽減できるということも知っておいていただきたい点です。

 

子どもの矯正は、体の成長をしっかりと観察しながら、適切な時期に必要な治療を行うと非常に有効です。

 

そのために、定期的にお子さまの口元、歯並びの成長をチェックすることが重要です。

 

今お子さまの口元や歯並びが気になっている方は、是非今回の記事を参考にしていただき、一度かかりつけ医にご相談いただければと思います。

 



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