子どもの歯並び、気になるなら「予防矯正」
[2022年08月22日]
最近、お子さまの口元や歯並びが少し気になっている親御様はいらっしゃいませんか。
近年、歯科の中では、虫歯や歯周病などのお口の病気を未然に防ぐことが重要視され、「予防歯科」という分野が大きなウェイトを占めるようになってきています。
そしてこの流れと同様、矯正の分野においても咬み合わせや歯並びの異常を未然に防ぐ「予防矯正」というのも最近よく聞かれるようになりました。
そこで、今回は、お子さまの口元や歯並びを気にされている親御様に向けて、予防矯正について少し掘り下げてお話ししてみたいと思います。
予防矯正って何?
予防矯正とは、咬み合わせや歯並びの異常を未然に防ぎ、健康も維持できるような口腔内に持っていくための土台づくりをする矯正治療です。
治療開始の年齢はおよそ6-7歳までを目安に、主に小児期が対象となります。
もちろん、コミュニケーションがしっかり取れるお子さまであれば、それよりも早い段階からアプローチすることもあります。
そしてこれからまだまだ体が成長していくので、それを生かし、顎や骨の成長をコントロールしながら治療を行っていきます。
この成長期を利用するところが、もう成長がストップしている成人してからの矯正治療と異なる点であり、予防矯正の特徴といえます。
なぜ予防矯正が重要視されるの?
歯並びを改善するのであれば、小児期からではなく成人してからの矯正治療でもいいのではないか、と思われるかもしれません。
なぜ予防矯正が重要視されるのでしょうか。
綺麗な歯並び、口元というのは、口腔周囲筋と呼ばれる顔周り、口周りの筋肉、舌の力のバランスによって成り立っています。
しかし、悪習癖と呼ばれる口呼吸、吸指癖(指を吸う)、咬唇癖(唇を噛む)などがあると、このバランスが崩れ、次第に余分な力が歯にかかり、将来的に永久歯が並ぶスペースの不足、咬合せや歯並びの、骨格の成長の異常に繋がります。
さらに、口呼吸については鼻呼吸で働くはずの免疫機能が上手く機能できず、体の免疫機能の低下やお子さまの健康な体づくりにも影響します。
予防矯正は、まさにこのような悪習癖を取り除くことを目的としています。
このように、予防矯正が重要視されるのは、お口の中だけではなく、全身的な健康の向上といったメリットも含んでいるという背景があることがあげられます。
どんな治療をするの?
では予防矯正とはどのような治療をするのでしょうか?
予防矯正は、成人になってからの矯正とは異なり、顎や骨の成長を利用するのがポイントです。
装置を使用した治療
症例にもよりますが、一部分のみワイヤーを使用する場合、マウスピースを使用する場合などがあります。
近年、よく用いられているのが取り外しができるマウスピースタイプです。
口腔周囲筋を鍛えるために、マウスピースの辺縁の長さが長めに作られていたり、ある程度歯並びを整えるアーチフォームが付与されていたりします。
1日8時間以上を目安に使用し継続することで、次第に顔周り、口周り、舌の筋肉のバランスが整っていきます。
お子さまが装置がしっかり使えるかどうかを心配される親御様もいらっしゃいますが、一度生活習慣の中に組み込むことができれば、問題なく慣れて使ってくれるようになります。
舌・口周りの筋肉トレーニング
マウスピースなどを利用して口腔周囲筋を鍛える他に、自分で行うセルフトレーニングがあります。
正しい舌の使い方、筋肉の使い方、食べ物の飲み込み方などを一度歯科医院で指導を行います。
そして、それが出来るようにお家でも練習、実践してもらいます。
最近ではお子さまそれぞれに合ったトレーニングプログラムを作成するなど、積極的に予防矯正を行っている歯科医院も増えています。
このようにトレーニングを行って均整の取れたバランスのいい口元になると、さらに矯正における大きなメリットがあります。
矯正治療後は、必ず歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きます。
この「後戻り」をいかに阻止するか、というのは非常に重要です。
今回お話したような口周りの筋肉のバランスを整えることは、この「後戻り」を防止する、かつ同じ状態をキープする上で、しっかり取り組んでおく治療といえます。
予防矯正はいつまでするの?
予防矯正に関して、「予防矯正はいつまでするのですか?」という治療期間についての質問もよく受けます。
予防矯正は〇歳まで、といった明確な年齢はありませんが、基本的に、顎の成長が止まった、永久歯が生えそろう段階までが対象になります。
そして、予防矯正では達成したい治療のゴールとして、以下のポイントがあります。
「舌の使い方、呼吸に問題がないか(舌や口腔周囲筋のバランスが良好か)」
「機能的な歯並び、咬合であるか」
「永久歯のスペースが確保されているか」
もちろん、ゴールの設定はお子さまによって異なることもありますし、総合的な判断は担当医によるので、あくまでこれらは目安です。
しかし、目指してきた予防矯正のゴールにどうしても及ばず、予防矯正だけでは正常な咬合関係や歯並びが得られないと診断され、成人矯正に移行するケースも実際は多くあります。
その際は、かかりつけ医と次のステップについてよく相談していかなければなりません。
綺麗な歯並びのために今からできること
ここまで、予防矯正についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
矯正治療自体は、実際何歳からでもスタートできます。
ただ、上でお話しした小児期からの悪習癖が、将来的に正常な咬み合わせや歯並びの育成の妨げになるというのは明らかです。
小児期の早い段階からこういった問題にアプローチし土台づくりができていることで、たとえ将来、成人矯正が必要になったとしても、難症例にならず治療の負担を軽減できるというメリットがあります。
今、お子さまの歯並びや口元が気になるという方は、まずは一度歯科医院にて診察してもらうことをおすすめします。
すぐに治療が必要でない場合もありますが、早めに状況を把握しておくことで経過を見るポイントも変わってきます。
是非今回の記事も参考にしていただき、かかりつけ医とお子さまのお口の状態についてよくお話していただければと思います。