子どもの受け口、自然に治る?

[2022年08月15日]

受け口とは、簡単に言うと、下の前歯が上の前歯の前に位置している状態をいい、反対咬合とも呼ばれます。

 

子どもの歯並びについては、小児期に咬合せのズレや歯列の乱れが多少あっても、診断によっては成長とともに経過を見ていくだけで問題ない場合もあります。

 

しかしながら、受け口については、経過観察だけで改善が見込めるケースというのは非常に少ないといわれています。

 

受け口、反対咬合といっても、前歯の傾斜や歯の上下の位置関係だけの問題であれば、比較的短期間で治療が終わることもあります。

 

しかしながら、上下の顎に前後的なズレがある骨格的な要因が絡んでいるような受け口の場合、それは下顎前突(かがくぜんとつ)と呼ばれ、経過観察で正常な咬合、歯並びを得ることは難しいといわれています。

 

今回は、お子さまの反対咬合が気になる、あるいはもしかしたら受け口になっているかもしれない、と思われる親御様に向けて、受け口の原因や治療、治療時期等について少し掘り下げてお話してみようと思います。

 

受け口の原因とは?

上でも少し触れましたが、受け口の原因と言われる3つを詳しくお話します。

 

舌癖

舌癖の中でも、舌を前方に出す癖が受け口の原因としてあげられます。

 

舌は筋肉で出来ており、舌圧と呼ばれる舌の力は歯並びに大きく影響します。

 

特に、下の前歯を前方に押し出すような舌圧がかかると、下の前歯が前に傾き、上の前歯との咬み合わせが反対になってしまうことがあります。

 

これを反対咬合と呼び、受け口の原因の一つとなります。

 

上下顎の発育不全、発育過剰

上下顎の発達において、上顎の劣成長(下顎に対して上顎の成長が小さい)、下顎の過成長(上顎に対して下顎の成長が大きい)が原因で受け口の状態になることがあります。

 

顎の成長に問題がある場合のいわゆる骨格性の要因と呼ばれるものです。

 

遺伝的要因

上でお話した上下顎の発育における骨格性の要因で起きる受け口については、遺伝的な要因があると言われています。

 

親御様で少しでも受け口の傾向があった場合は、お子さまにもそれが遺伝する可能性が高く、治療においては親御様の口元や歯並びについてもしっかりみておく必要があります。

 

受け口の治療とは?

では実際に受け口にはどういった治療があるのでしょうか。

 

矯正治療全てに言えることですが、基本的に顎の大きさ、成長の程度、歯並びなど総合的に診査し、どこに受け口となった原因があるのかを確認した上で治療方法が決まっていきます。

 

歯並びの問題ではなく、骨格的な要因として上下の顎の発育に問題がある場合は、まだお子さまの場合は成長期ということを利用して、顎の成長をしっかりコントロールしていくことに主眼をおいて治療を進めていきます。

 

装置としては、マウスピース装置、上顎前方けん引装置(上顎の成長を促すための装置)、拡大床(歯列や顎を広げる装置)がよく用いられます。

 

受け口はすぐに治療しないとダメ?

一方で、受け口の治療説明の際に、よく診療室で親御様からきかれるのが、

 

「いますぐ治療しなければいけませんか」

「経過観察で治らないのでしょうか」

 

といった治療開始時期についての質問です。

 

親御様としては、できれば経過観察で自然と治ってくれたら、という思いがあるかもしれません。

 

しかしながら、結論からいうと、冒頭にお話したように、受け口に対するアプローチは早い段階から行う必要があり、経過観察だけで治ってくれるケースというのはそう多くありません。

 

その理由については、以下のことがあげられます。

 

下顎の成長によってさらに悪化する

一般的に体の成長曲線でいうと、下顎の成長のスパート時期は、上顎の成長スパート時期よりも後です。

 

10歳頃を過ぎると上顎の成長の速度は落ちていきますが、下顎は18歳頃まで成長しつづけます。

 

つまり、小児期において上下顎の発育のコントロールをせずに上下顎の骨格的な前後の位置関係の改善がなされないままでいると、下顎はさらに成長し、より受け口の改善が難しくなっていきます。

 

外科的な治療が必要になることがある

経過観察だけで上下顎の発育のコントロールをせずに成人となった場合、顎の成長はストップしているので、もう小児期のような顎の成長を利用した治療はできません。

 

この場合、顎の骨を削ったり、歯を抜歯したり、といった手術などの外科的な治療方法を選択しなければならないことがあります。

 

やはり外科的な治療が含まれると、傷の治癒期間も考慮しなければならず、治療期間が長くなり、体にかかる負担も思った以上に大きくなります。

 

このように、受け口については歯並びだけではなく、顎の成長など骨格的な要因が絡んでいることから、治療方法の内容含めて、治療開始時期については早めにかかりつけ医と相談が必要です。

 

受け口を治すには早期アプローチが重要

ここまで、受け口の原因、治療内容等についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか。

 

上でお話したように、歯並びのみを改善する矯正治療とはやや異なり、受け口の改善には顎の骨の成長を考慮した治療計画が必要なことがおわかりいただけたかと思います。

 

もちろん、成人してからも受け口の改善も不可能ではなく、治療されている方も多くいらっしゃいます。

 

しかしながら、上でお話したように、成人してからは治療の難易度が上がっていくことや外科的な処置も含まれ、体にも負担がかかるというデメリットもあります。

 

こういった意味でも出来れば早めに対応しておきたいところです。

 

もし、今、お子さまの受け口、反対咬合が気になっている方や治療するかどうか迷われている方がいらっしゃれば、まずは歯科医院でお子さまの今の状態を診てもらうことをおすすめします。

 

経過観察で問題ないケースなのか、それとも今のタイミングで何か治療を始めた方がいいケースなのかは、歯科医院で診てもらわないことにはわかりません。

 

特に、受け口の治療においては、上下顎の成長期が非常に重要です。

 

こういったことからも、今すぐ治療する、しないに関わらず、まずは歯科医院でお子さまの今のお口の状態について把握しておくことが大切といえます。

 

今回の記事を参考に、是非かかりつけ医としっかりと治療についてお話していただければと思います。



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