
口腔機能発達不全症について(その①)
[2025年02月21日]
「うちの子、いまだに食べこぼしが多くって・・・」
「いつもお口をポカンと開けているの。そのうち治るかしら?」
最近、このようなお子さんが増えています。
日常生活において、病気を疑うほどではないけれども気になること、育児ではよくありますね。
しかし、その中には早めの対処を行うべき疾患が隠れていたりもします。
その1つが「口腔機能発達不全症」です。
これは、お口の機能が十分に発達していない状態のことを指します。
今回は、「口腔機能発達不全症」とは一体どのようなものなのか、どんな症状があるのかについてお話していきましょう。
次回は「口腔機能発達不全症」の検査や治療についてお話していく予定です。
目次
- ◯口腔機能発達不全症とは
- ◯口腔機能発達不全症の症状
- ◆食事の量や食べ方
- ◆お口ポカン・口呼吸
- ◆口腔習癖
- ◆発音障害
- ◆歯の萌出不全
- ◯まとめ
1. 口腔機能発達不全症とは
「食べる」「話す」「呼吸をする」
当たり前のようにできることだと思っている方が多いかと思います。
しかし、生まれつきの障害はないものの、お口の動かし方や使い方といった機能が十分に発達していないお子さんが、近年増加しています。
2018年に日本歯科医学会は、「食べる機能」「話す機能」「その他の機能」が十分に発達していない、または正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がない状態を「口腔機能発達不全症」と定義し、その治療が保険適応となりました。
(令和6年3月 日本歯科学会「口腔機能発達不全症に関する基本的考え方」より)
つまり、「生まれつきの障害はないが、お口の動かし方や使い方といった機能が十分に発達していない状態」には、治療が必要だということです。
小児期は成長のステージに合わせて、様々な機能を獲得していきます。
そのため、機能の発達および獲得が遅れてしまった場合、早期に発見し、正しい成長リズムに導くことが大切です。
◆ 口腔機能発達不全症を見逃すとどうなる?
成長過程で機能の発達・獲得が遅れると、その部分の骨や筋肉といった身体の成長が正常に行われず、全身の健康にも影響を及ぼします。
これは、成人してからの高血圧・心臓疾患・糖尿病といった生活習慣病につながる可能性があり、
高齢者になったときには「口腔機能低下症」になるリスクが非常に高まることが近年明らかになっています。
そのためにも、小児期のできるだけ早い段階で「口腔機能発達不全症」を発見し、正しい方向に導くことが重要なのです。
2. 口腔機能発達不全症の症状
口腔機能発達不全症は、いわゆる「病的な状態」とは異なります。
近くで見ていて、違和感をおぼえる程度の症状が多いかもしれません。
「何となく気になるかな」「成長と共に、みんなと同じになるかな」
そんな違和感を、歯科医院で相談してみることが大切です。
では、注意すべき症状についてみていきましょう。
◆ 2-1. 食事の量や食べ方
症状:うまく咬めない・うまく飲み込めない。食べこぼしが多い。音を立てて食べる。食べる時間が早すぎる・遅すぎる。
食べる機能が発達していないと、唇で食べ物をうまく捕まえる・取り込むことができないことが考えられます。
また、細かく噛み切ったり、すり潰したりすることが上手にできないために、
- 食べるのが極端に遅い
- 咬まずに丸呑みにしているために食べるのが極端に早い
飲み込む機能が発達していないと、飲み込むまでに時間がかかることや、むせやすいことがあります。
また、飲み込みの際に舌が前に出る癖がある場合は、歯並びや咬み合わせに影響を及ぼすことがあります。
うまく食べることができないために、
- 栄養摂取状態が悪化して「やせ」の状態になる
- 咬まずに飲み込んでしまうことで早食いの習慣がつき、「肥満」につながる
◆ 2-2. お口ポカン・口呼吸
症状:いつもお口がポカンと開いている。鼻呼吸がうまくできない。口腔内が乾燥している。唇を閉じると顎にシワが寄る。
普段からお口をポカンと開けていると、お口の周りの筋肉が発達しません。
それによって、
- お口が閉じにくくなる
- 骨の発育に必要な刺激が足りず、顎骨の発育不全や歯列不正につながる
- 舌の動きが鈍くなる
- くちゃくちゃ音を立てて食べる、食べこぼしが多い
また、口呼吸は以下の問題を引き起こしやすくなります。
- 風邪やアレルギー
- むし歯や歯肉炎
- 口臭
◆ 2-3. 口腔習癖
症状:舌癖・指しゃぶり など
赤ちゃんの頃は、舌を前方に出した状態でミルクを飲みます。
歯が生え、離乳食を食べるようになるにつれて、飲み込む時は舌を上顎の裏(お口の中の天井部分)に当てて飲み込むようになっていきます。
しかし、以下の癖があると、問題が生じます。
- 飲み込む際に舌を前方に突き出す癖
- 常にお口をポカンと開けている
このような癖があると、
- 舌の位置が低くなり(低位舌)、上顎への刺激不足が生じる
- 上下顎骨の成長が不足、または過剰になる
- 歯並びの乱れにつながる
指しゃぶりは、2歳ごろまでは問題ありませんが、4歳以上になっても続いていると、以下の影響が出ることがあります。
- 歯並びへの影響
- 顎の成長への悪影響
- 他の口腔習癖へとつながる
3歳頃から、徐々に減らしていくことが大切です。
◆ 2-4. 発音障害
症状:発音がしにくい。コミュニケーションが取りにくい。
舌の裏側についている舌小帯というヒダが短いと、舌が動かしにくくなり、発音がしにくいことがあります。
これを舌小帯萎縮症といい、以下の発音が曖昧になりやすいのが特徴です。
- タ行の一部
- ナ行
- ラ行
また、以下の理由によって発音が不明瞭になりやすいこともあります。
- 唇・舌・頬といったお口の周りの筋肉の力不足
- 歯列不正による息漏れ
- 舌や唇の動きが制限されて発音がしにくい
◆ 2-5. 歯の萌出遅延
症状:噛みにくい。発音しにくい。
歯が生えてくる時期や生え変わりのタイミングは人それぞれです。
気にし過ぎる必要はありませんが、以下のような場合は歯科医院での相談をおすすめします。
- 歯がなかなか生えてこない
- 乳歯が抜けても、永久歯が半年以上生えてこない
3. まとめ
- 口腔機能発達不全症とは、明らかな原因疾患がないが、食べる・話す・呼吸をする機能が十分に発達していない状態を指す。
- 早期発見し、正しい成長リズムに導くことで、将来の病気を予防できる。
- 症状には以下のものがある:
- 食べたり飲んだりするのが難しい
- 常にお口が開いている
- 発音がしにくい
- 口腔習癖(指しゃぶり・舌癖)
- 歯の萌出遅延
口腔機能発達不全症は、身近に存在します。
「たいしたことないからいいかな」「とりあえず様子見でいいかな」
と思わず、気軽に歯科医院で相談してみてください。
次回は、口腔機能発達不全症が疑われた場合の検査や治療について解説します。