乳歯の歯並びの隙間は永久歯のための大切な隙間

[2022年12月16日]

こんにちは

永久歯の歯並びに隙間がたくさんあると空隙歯列という歯列不正の一種とみなされます。

一方、乳歯であれば、歯並びにあいている隙間は歯列不正とはみなされず、正常なものとして判断されます。

乳歯の歯並びの隙間は、どうして問題視されないのでしょうか。

今回は、乳歯の歯並びの隙間についてお話しします。

 

生理的空隙

乳歯の歯並びに見られる歯の隙間を生理的空隙・生理的歯間空隙とよんでいます。

どちらも同じ意味ですが、ここでは生理的空隙とします。

生理的空隙には、霊長空隙と発育空隙の2種類があります。

 

霊長空隙

霊長空隙は、上顎の乳側切歯(前から2番目の乳歯)と乳犬歯(3番目の乳歯)の間、下顎の乳犬歯と第一乳臼歯(4番目の乳歯)の間に生じる隙間です。

簡単にいえば、乳犬歯の周りにできる隙間ですね。

上顎と下顎では、霊長空隙のできる場所に違いがみられます。

これは、永久歯の生えかわりへの関与の仕組みに違いがあるからです。

具体的には上顎の霊長空隙は上顎の前歯部の歯並びの生えかわりのための隙間、下顎の霊長空隙は第一大臼歯(6歳臼歯)がスムーズに生えるための隙間、奥歯用の隙間です。

 

発育空隙

発育空隙は、4~5歳ごろから現れ始める上顎前歯部の乳歯の歯並びの隙間で、霊長空隙以外の隙間をいいます。

発育空隙では、上顎の前歯部に広い範囲で隙間が認められ、見た目が悪くなりますが、この隙間は永久歯への生え変わりでなくなる隙間です。

このことから、発育空隙が認められる時期を、”みにくいアヒルの子”の時期と呼ぶこともあります。

 

生理的空隙はいずれなくなる

発育空隙は、第一大臼歯(6歳臼歯)が完全に生えた頃にはなくなります。

このように、乳歯の歯並びの隙間である生理的空隙は、永久歯への生え変わりに伴い、自然になくなっていきます。

 

リーウェイスペース

生理的空隙に加えて、もうひとつ永久歯がきれいに並ぶための仕組みがヒトの体には備わっています。

それがリーウェイスペースです。

 

リーウェイスペースとは

リーウェイスペースとは、乳犬歯と第一乳臼歯、第二乳臼歯の横幅を足した数と、それらの次に生えてくる永久歯である犬歯と第一小臼歯、第二小臼歯の横幅を足した数の差です。

ちなみに、大きいのは乳歯の方の横幅の合計値です。

永久歯の方が歯のサイズが大きいように思われるのはもっともなのですが、リーウェイスペースに限っては、乳歯と永久歯で逆転現象が起こります。

どれくらいなのかというと、上顎でおよそ1ミリ、下顎でおよそ3ミリです。

 

リーウェイスペースの役割

乳歯と永久歯を比べてみると、永久歯の方が数は多いですし、サイズも基本的には大きいです。

このまま乳歯が永久歯に生えかわろうとしても、スペース不足が生じるのは目に見えています。

そこで、ヒトの体は永久歯が並ぶスペース不足を解消するために、3本の乳歯の横幅の合計値が大きくなっていると考えられています。

このように、リーウェイスペースも、生理的空隙と同じく永久歯の歯並びがきれいになるよう調整する大切な役割を担っています。

 

乳歯の歯並びと永久歯の歯並びの関係

乳歯の歯並びの隙間の有無と永久歯の歯並びの関係についてご説明します。

 

乳歯の歯並びの分類

乳歯の歯並びは、隙間に着目すると『空隙型』『中間型』『閉鎖型』の3タイプに分類できます。

『空隙型』は、隙間の多い乳歯の歯並びです。

『閉鎖型』は、隙間のない乳歯の歯並びです。

乳歯の乱杭歯もこちらに含まれます。

『中間型』は、隙間があるけれど、少なめの乳歯の歯並びで、隙間の幅を全て足した数値が5㎜以下くらいです。

 

乳歯の歯並びと永久歯の歯並びの関係

『空隙型』では、ほとんどのお子さんで永久歯の歯並びがきれいになっています。

『中間型』では、お子さんの3分の1ほどで永久歯の歯並びに何らかの歯列不正が生じ、『閉鎖型』では3分の2程のお子さんで歯列不正が起こります。

 

乳歯の歯並びの隙間の役割

乳歯の歯並びに隙間が多い方と少ない方を比べてみると、隙間の少ない方の方が永久歯の歯並びに歯列不正が生じやすい傾向があります。

反対に隙間の多い方は、永久歯の歯列不正が生じにくいです。

このことからも乳歯の歯並びの隙間が、永久歯の歯並びをきれいにするために重要な役割を担っていることが、ご理解いただけると思います。

 

まとめ

今回は、乳歯の歯並びの隙間についてお話ししました。

乳歯の歯並びに認められる歯の隙間は、生理的空隙という正常な隙間です。

生理的空隙は

①発育空隙

②霊長空隙

の総称です。

これらの歯並びの隙間は、次に生えてくる永久歯がきれいに並ぶための隙間なので、正常な隙間です。

これに加え、リーウェイスペースもあります。

ただし、生理的空隙やリーウェイスペースがあるからといって、必ず永久歯がきれいに並ぶとは限りません。

したがって、子供の矯正治療、小児矯正では、歯の生え替わりの時期から、発育段階に応じた適切な対応をとり、永久歯の歯並びがきれいになるように整えていきます。

当院は、子供さんの歯列不正に関しての専門的知識に加え、豊富な治療経験を有しています。

もし、お子さんの歯並びに気になる点があれば、当院でぜひご相談ください。

 



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